最初から8000歩を目指さなくても良い
では、「中強度」とはどのくらいでしょうか。これは、「なんとか会話はできるけれど、歌は歌えない程度」の速さが目安です。鼻歌が出るくらいでは軽すぎ、逆に会話もできないほど息が上がる場合は強すぎます。つまり、少し頑張るくらいのウォーキングがちょうど良いのです。
ここで、多くの人が安心するデータがあります。それは、最初から8000歩を目指さなくても良いこと。中之条研究では、歩数によって得られる健康効果が段階的に変化することも見えてきました。
たとえば、4000歩程度でも、うつ傾向の改善や心の健康維持との関連が見られました。さらに5000歩程度になると、認知症や要介護リスク、脳卒中などの予防との関連も見え始めました。つまり、「ゼロより少しでも動く」ことに意味があるのです。
年齢によっても必要な運動量や注意点は変わってきます。たとえば20代〜40代では、長時間のデスクワークやスマートフォン使用による座りすぎが問題になりやすいでしょう。
運動不足による血流の低下やストレスの蓄積、睡眠の質の低下などを防ぐためにも、意識的に歩く時間を作ることが重要です。
この年代では、「運動不足なのに脳だけ疲れている」という状態が増えていますから、通勤時に少し速歩きを入れる、一駅分歩く、昼休みに10分だけ外を歩くなど、日常の中で動く習慣を作ってください。
大切なのは「過度」ではなく「適度」
50代〜60代になると、生活習慣病予防の意味がさらに大きくなります。高血圧や糖尿病、脂質異常症などは、自覚症状が少ないまま進行し、血管に負担をかけ続けます。すると、脳卒中や心疾患、認知症のリスクも高まっていきます。
この年代では、「歩数」と「中強度活動」の両方を意識することが重要でしょう。特に少し息が弾むくらいの歩行を取り入れることで、血流改善や代謝改善の効果が高まりやすくなります。
さらに70代以降では、「歩くことそのものを維持する」意味が大きくなってきます。加齢とともに筋力やバランス能力、持久力が低下していきます。すると転倒のリスクが高まり、外出の機会も減るでしょう。
ですが歩かなくなると、さらに筋力が落ちますから、この悪循環がフレイル(虚弱)や要介護状態へつながっていくのです。だからこそ高齢期では、無理に頑張るよりも、毎日少しでも歩き続けることが大切です。
また、高齢者の場合は注意点もあります。たとえば、
●膝や腰に痛みがある
●持病がある
●転倒不安がある
●急激な血圧変動がある
といった場合には、無理な速歩きは避けたほうが良いケースもあるかもしれません。いきなり長距離を歩こうとすると、関節や心肺に大きな負担がかかります。
私は研究を続ける中で、頑張りすぎる人ほど続かない場面を何度も見てきました。実際、中之条研究でも、歩けば歩くほど健康になるわけではないことがわかっています。
1日12000歩以上、さらに長時間(40分以上)の中強度活動では、健康効果が頭打ちになり、逆に疲労や関節への負担が増える可能性も出てきました。
つまり大切なのは、「過度」ではなく「適度」なのです。無理をして1週間だけウォーキングを頑張るよりも、毎日少しずつでも続けるほうが、脳にも身体にも良い影響を与えます。
検索時にプレジデントオンラインに関連する記事が表示されます


