眠っているはずなのに疲れが取れないときには、どうすればいいか。産業医の池井佑丞さんは「眠気や疲労感の背景に、睡眠中に呼吸が止まる、睡眠時無呼吸症候群が隠れていることがある」という――。
ベッドで快適に眠る男性
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男性と閉経後の女性で発症リスクが高い

「十分寝ているはずなのに、日中に眠気に襲われる」「朝起きても疲れが取れない」「家族から、大きないびきをかいていると言われる」――。忙しい毎日を送っていると、こうした症状も「仕事が忙しいから」「年齢のせい」と考えてしまいがちです。

しかし、そういった眠気や疲労感の背景には、睡眠中に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)」が隠れている可能性があります。

日本人約7000人を対象とした調査では、男性の約24%、閉経後女性の約10%に中等度以上の睡眠呼吸障害がみられることが報告されており、特に男性や閉経後の女性で発症リスクが高まることが知られています(松本・陳. 2021)。

睡眠中の呼吸が妨げられると、本人が気づかないうちに睡眠の質が低下していきます。その結果、日中の眠気や集中力・判断力の低下にもつながり、日々のパフォーマンスを損なう原因にもなり得ます。それだけでなく、睡眠時無呼吸症候群を放置することは、高血圧や心筋梗塞などの発症とも関連があることがわかっています。

日中のパフォーマンスだけではなく、長期的な健康にも関わる睡眠時無呼吸症候群について、今回は、そのメカニズムやさまざまな病気との関連、そして適切な対応や日常でできる対策について解説していきます。

夜間の頻尿で目が覚めることもある

睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に何度も呼吸が止まったり、弱くなったりする病気です。医学的には、10秒以上の呼吸停止を「無呼吸」、呼吸が浅くなる状態を「低呼吸」と呼び、睡眠中にこれらが1時間あたり5回以上出現する場合に、本症が疑われます。

睡眠時無呼吸症候群は、大きく2つのタイプに分類されます。一つは、呼吸を司る脳からの司令が一時的に弱くなる「中枢性睡眠時無呼吸症候群(Central Sleep Apnea Syndrome:CSAS)」、もう一つは空気の通り道である気道が物理的に塞がる「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea Syndrome:OSAS)」です。そして、患者さんの大半は、後者が占めています(日本呼吸器学会. 2020)。

閉塞性タイプでは、入眠中に喉や舌の筋肉が緩むことで気道が狭まる、あるいは完全に塞がってしまいます。気道の閉塞によって呼吸が停止し、血液中の酸素濃度が低下すると、危険を察知した脳が自らを強制的に覚醒させて呼吸を再開させようとします。すると、本人は眠っているつもりでも、呼吸停止と覚醒が一晩に何度も繰り返される状態に陥ることになるのです。

代表的な症状には、大きないびきや睡眠中の息苦しそうにあえぐような呼吸のほか、夜間の頻尿で目が覚めることもあります。さらに、起床時の頭痛や口の渇き、十分に寝たはずなのに抜けない疲労感、日中の強い眠気や集中力の低下など、日常生活のパフォーマンスに直結する症状も引き起こします。