物件価格は4100万円、リノベーション費用は2000万円。細かく分かれた4DKを解体し、2LDKとウォークスルークローゼットへつくり替えた。

部屋のテーマは、デンマークを中心とした北欧空間だ。家具や時計、アートを選び、天井は覆わずにコンクリートを見せて高さを確保した。特にこだわったのが照明だった。シーリングライト一つで部屋全体を照らさず、食事や作業など、用途に応じて必要な場所だけに明かりをつける。

「北欧の夜のやさしい光を意識しました。『ご飯を食べるならここ』『作業するならここ』というように、シーンによって明るさを変えられます」(同)

キッチン奥のパントリーに食器や家電をしまい、生活感を隠した。玄関から洗面所、リビングへ抜けるクローゼットでは、乾燥を終えた洗濯物をその場で畳み、収納できる。在宅勤務が多い妻のため、寝室の窓際には仕事場を設けた。森山さんはリビングのカウンターを使う。

リビングの一角には、用途を決め切らない小上がりもある。いまは収納だが、子どもの遊び場にも、来客時の寝場所にもなる。寝室からいたばし花火大会が見えることは、入居後に知った「うれしい誤算」だった。

取材時、妻と子どもはまだ里帰り先にいた。家族がそろう前の部屋で、森山さんは家づくりを振り返った。

「『解像度』を高めてから家づくりに臨んだことで、本当に自分たちの理想の暮らしを実現することができました」

新しさに払うはずだったお金を、広さや光、家事のしやすさへ。昭和のコンクリートの天井の下に、森山さん夫婦が思い描いた「北欧の夜」がある。

70歳、何もない部屋から

千葉市の団地を訪れたのは、沖縄から移ってきた70歳の女性に、完成した部屋が引き渡される日だった。

部屋は約50平方メートルで、築46年の建物の2階にある。この部屋の近隣にある類似物件の売買相場は500~600万円だ。

女性は沖縄の海が見えるマンションで夫と暮らしていたが、2026年3月に夫を亡くした。

「私一人になってしまったから、息子が『すぐそばにいろ』と千葉に呼んでくれたんです」(女性)

沖縄を離れる際、一人で家財を片づけ、飛行機に乗った。空港には、近くに住む40代の息子が迎えに来ていた。

初めて部屋を見たときは、不安になった。トイレは昔ながらのタイル張りで、キッチンは壁で仕切られていた。それが、壁のない明るい空間へ変わった。

「こんなにきれいになるんだから、びっくりですよね。軽井沢の部屋みたい」

最も気に入ったのは無垢材の床だ。裸足でも冷たくなく、年月とともに赤みを帯び、味わいが増していく。リノベーションを手がけた「団地リノベ屋」を運営する「ナガツユアートテック」の永露哲司代表からそう聞くと、女性は笑った。

「そうなんですか。今が一番若いんですね(笑)。すごく気に入りました。じゅうたんは敷かないの、嫌いだから。ほこりっぽくなるし、無垢の床が本当にうれしい」