2026年上半期、東京23区の新築マンション平均価格は1億4249万円に達した。そんななか、築半世紀ほどの「昭和の団地」を買い、自分仕様につくり替える人たちがいる。NHKドラマ「しあわせは食べて寝て待て」「団地のふたり」でも、団地で暮らす人々の日常やつながりが描かれた。古い、狭い、不便。そんなイメージも残る団地を、なぜあえて選ぶのか。3世帯の部屋を訪ねると、価格だけでは説明できない理由が見えてきた。
「ここ以外は考えられない」
東急田園都市線たまプラーザ駅から徒歩5~11分ほど。東急百貨店の前を通り過ぎると、駅前のにぎわいが途切れ、緑が濃くなる。広い敷地には4~5階建ての棟がゆったりと並ぶ。1968年3月に竣工した、横浜市のたまプラーザ団地だ。全47棟、1254戸からなる。
訪ねたのは、2階にある約66平方メートルの部屋。40代半ばの妻、50代の夫、小学校低学年の長男が暮らしている。
一家は以前から、同じ団地の賃貸住宅に7~8年住んでいた。その間に子どもが生まれ、小学校への入学が近づいた。夫の母から持ち家を考えるよう勧められたが、夫婦が買いたい場所は初めから決まっていた。
「自然があるのに、駅から離れていない。なかなか両立できないわがままを、ここではかなえられるんです。東急百貨店できれいなものを見てから、この自然のなかを歩いて帰れるのも、ミーハーな私には大きいです(笑)」(妻)
2024年夏、希望に合う部屋が売りに出た。妻が間取りより先にこだわったのは、窓の外の景色だ。庭園のような緑が広がり、他の建物は視界の隅にわずかに見えるだけだった。
約1200万円をかけて壁や床を取り払い、3LDKを2LDKへ変更するリノベーションを行った。16~17畳ほどのリビングを設け、キッチンと洗面所には、妻が好きな昭和の雰囲気を残すタイルを選んだ。
「賃貸で団地に住みながら、『自分はこうしたい』とゆっくり考える時間があったのは、すごく良かったです」(同)
押し入れをなくした子ども部屋には、2段ベッドの半分を収めた。しかし、長男は一人で寝るのがまだ寂しく、夜になると家族3人が同じ寝室へ戻る。
長く住んだ経験があるからこそ、団地の弱点も分かっていた。以前の部屋は窓の立て付けが悪く、冬には隙間風と結露に悩まされた。壁にカビが生えないよう、室内では除湿機を回していたという。
新居では、外窓の内側にペアガラスの内窓を設け、壁にも断熱材を加えた。暑さ、寒さが和らぎ、雨に気づかないほど静かになった。

