米国は世界有数の石油・天然ガス生産国で、エネルギー価格の上昇はエネルギー部門の所得増加につながる。これに対し、ユーロ圏はエネルギーの純輸入地域で、価格上昇に伴って輸入代金が膨らみ、海外への所得移転が増加する。米国の交易条件が改善する一方、ユーロ圏では交易条件が悪化し、実質所得が域外へ流出する。この違いがドル高・ユーロ安を促す一因となっている。

これは2022年のエネルギー危機でユーロが大幅に下落した際にもみられた構図である。ロシア産天然ガスへの依存低下やLNG調達先の多様化などを背景に、欧州を取り巻くエネルギー環境は当時より改善している。

しかし、供給先がロシアから米国や中東などに分散しても、ユーロ圏がエネルギーの純輸入地域であるという経済構造そのものは変わらない。世界的なエネルギー供給ショックが発生すれば、輸入価格の上昇を通じて域内の実質所得が海外に流出し、ユーロの下押し圧力となる。

日没時のガス貯蔵タンク(英国)
写真=iStock.com/Iurii Garmash
※写真はイメージです

フランスから広がる財政リスク

第二の問題は、フランスに端を発する財政リスクである。2027年予算を巡る政治的な不透明感や財政再建の実行可能性への懸念から、このところフランス国債が大きく売られている。

10年物国債利回りは10月2日に一時5%近くまで上昇し、2002年以来の高水準を記録した。その後はいったん低下したものの、7日には再び4.9%前後まで上昇している。域内の安全資産であるドイツ国債との10年物利回り格差(スプレッド)も、10月2日に150bp近くまで拡大し、その後も高水準で推移している。

フランス政府は2027年予算案で、2026年に国内総生産(GDP)比で5.4%程度に達した財政赤字を5%へ縮小する方針を示している。だが、国民議会(下院)で安定多数を持たない政府が、野党勢の協力を仰ぎながら、歳出削減や歳入増加策を実現できるかは不透明だ。野党の協力を求める過程で財政再建策が骨抜きとなることや、予算が未成立のまま越年し、財政再建が先送りされる恐れがある。

格下げのリスクも高まっている。大手格付け会社ムーディーズは現在、フランス国債の格付けを「Aa3」、格付け見通しを「ネガティブ」としている。10月2日には、議会の政治的分断を背景に2027年予算成立の見通しが極めて不透明なうえ、2027年春の大統領選挙後も財政再建が不安視されるとの見方を示した。次回の格付け判断は10月23日に予定されている。

ユーロ圏全体の問題に波及する可能性

より注意が必要なのは、フランスの問題が一国の財政不安にとどまらず、ユーロ圏全体の問題に波及する可能性である。フランスはユーロ圏でドイツに次ぐ経済規模を持ち、国債市場の規模も大きい。フランス国債への信認低下が続けば、イタリアなど債務残高が大きい国にも国債売りが波及し、ユーロ圏内の金利格差が拡大する恐れがある。

そうなれば、ECBは難しい政策運営を迫られる。エネルギー価格上昇によるインフレ圧力に対応するため金融引き締めを続ける一方で、利上げによって財政懸念国の国債利回りが一段と上昇すれば、加盟国間の金融環境の乖離(市場の分断化)にも配慮する必要があるためだ。フランスの財政問題がユーロ圏全体の国債市場への信認問題へと広がれば、ユーロそのものに対するリスクプレミアムを高める可能性がある。