まず目を付けられるのは預金です。宗教活動の規模に比べて不自然に大きな入出金があれば、当然その理由を確認します。必要に応じて金融機関への反面調査を行い、申告内容と実際の資金の流れが一致しているかを調べます。
もう一つは、登記です。代表役員の変更や合併は登記事項なので、登記情報を確認すれば異動を把握できます。長年動きのなかった法人の代表役員が突然、まったく縁のない人物に変わったとなれば、「何かあった」というシグナルです。
さらに警察との連携によって情報を得るケースもあるでしょう。国税と警視庁は人事交流を行い、情報交換もしています。すべてのデータが共有されるわけではありませんが、反社会的勢力が宗教法人に手を伸ばしているという情報は、当然、警察側にもあります。
今回のように文化庁が動き、ガイドラインで「不正利用の判断基準」が示され、情報共有の仕組みが整えば、警察庁も本格的に動くはずです。
国税が本格的に動くのはこれから
国税に宗教法人の専門部署があるのかというと、現状はありません。
私が長くいた調査部は、原則として資本金1億円以上の会社を担当する部署です。宗教法人には資本金という概念がないので、そもそも調査部の守備範囲に入ってきません。
大掛かりな宗教法人のような変わった事案を担当するとしたら、国税局の課税部にある「資料調査課」、通称「リョウチョウ」です。ここは査察(マルサ)のように裁判所の令状で強制捜索するのではなく、帳簿や領収書を見ながら任意調査の枠内で徹底的に掘り下げる部隊で、税務署で腕を認められた調査官が集められています。
「リョウチョウは査察より怖い」と言われることもありますが、今テレビで放送されているドラマ『VIVANT』であれば、国税の中の「別班」の実動部隊、と言えば雰囲気が伝わるでしょうか。彼らがターゲットとするのは、宗教法人から芸能人、医者まで、バラエティに富んでいます。
ただ、大規模な宗教法人は別として、一般的な規模の宗教法人であれば、通常は税務署の法人課税部門が所管します。税務署では、申告内容や各種の資料情報を分析し、実地調査を行うケースがないわけではありませんが、文書や電話による確認のみで済ませるケースも少なくありません。
その意味では、「宗教法人は優遇されているから国税に狙われてこなかった」ということはなく、「宗教法人の不正を専門的に追う組織体制がなかった」と私は見ています。
しかし、そうした状況は今後変わるかもしれません。国税局の課税部には、電子商取引、富裕層、国際取引、消費税といった分野ごとに専門の調査官を集めた部門が近年整備されてきました。私が率いた電子商取引の部門も、その一つです。
今後、宗教法人やNPOのような非営利団体が「隠れ蓑」として使われる事例が積み上がり、脱税の温床になるようなケースが増えれば、専門部署ができても不思議ではありません。
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