普通の主婦が、人を殺めて服役中の無期懲役囚と文通をする。しかも、高校生の娘や中学生の息子にも文通を勧めて、その無期懲役囚から勉強方法を教わる──。

一般には考えられないことを、私たちは4年以上も続けています。今では、主人も含めて家族みんなが、刑務所からの手紙を楽しみに待つようになりました。その無期懲役囚の方は、美達大和さんといいます。既に8冊の著書を世に出しているので、名前を知っている人もいるのではないでしょうか。

きっかけは私が『人を殺すとはどういうことか』(新潮文庫)を読んだことです。そのときに受けた衝撃をどう表したらいいのかわかりません。ただ、美達さんには、一本筋が通ったものがあるんじゃないかと感じました。少なくとも、お金欲しさとか女性絡みの怨恨からの犯罪じゃない。言ってみれば、自分の主義主張を通すための行為です。

もちろん、だからといって、殺人が許されるものではありません。美達さんも現在では、「あまりにも自分の信念や考えに囚われて、悪いことをしてしまった」と真摯に反省しています。彼は、自分への罰として、刑務所から一生出ないと決めています。殺人の無期懲役囚でも何十年か経てば、仮釈放の道があるにもかかわらずです。

先の本や新聞記事などを読むと、美達さんが子供の頃に「IQ150の天才児」と言われていたことや、強烈な個性を持った父親に独特の育てられ方をされたことがわかります。超優等生でありながら、ケンカは300戦以上して同じ中学生には無敗で、年上の不良たちからも一目置かれる存在でした。社会に出てからは、学習教材の営業で年収8000万円を稼いでいた辣腕営業マンだったようです。

彼は今でも「自分の持っている力を使い切らないのは自分への裏切りだ」「自分が決めたことは自分との約束だから、絶対にやり切る」という信念を持ち続けています。刑務所では、自分の自由になる時間は午後5時から9時までしかありませんが、その短い時間に月100~200冊の本や雑誌を読み、本の原稿を書いているそうです。その1分1秒も無駄にしない生き方には、頭が下がります。