「みたっちゃんに聞いてみよう」
娘と、息子が文通を開始

こうして、美達さんとの文通は、はじまりました。次第に、私は家のこと、家族のこと、子供が通う学校のこと、友人のことなども、手紙にしたためるようになりました。その度に、美達さんは親身になって、愛情あふれる返事をくれます。

娘が本好きとわかると、娘向きのたくさんの本を送ってくれるようになりました。息子が文章を読むのが嫌いで、私が大きな文字で手紙を書いてくれるように頼むと、それまでの3倍くらいの大きな文字で返事をくれます。そして、息子が興味を持ちそうな本も送ってくれました。息子は「なぜ、僕がおもしろいと思う本がわかるんだろう」と不思議がっています。また、私が、刑務所ではどのような服装で過ごしているのかとたずねたら、実際の衣類を送ってくれたこともありました。

最初は、美達さんの手紙を家族で読んでは、驚いたり、感心したりしていました。いつしか、私たち家族は、美達さんのことを「みたっちゃん」と呼ぶようになり、かなり身近な存在と感じるまでになったのです。家族の間に自然と「みたっちゃんに聞いてみよう」という会話が増えてきました。

半年経った頃、当時高校1年だった娘が、はじめてみたっちゃんに手紙を出しました。みたっちゃんからは、懇切丁寧な返事をいただきました。

息子はさらに半年くらい経って、手紙を書きはじめます。中学生だった息子の場合、手紙というよりはメモと言ったほうがいいかもしれません。それくらい短いものでした。内容も「ケガの治し方」「目をよくする方法」さらには「ケンカの仕方」と、野生児そのままのものでした。これにも、みたっちゃんは愛情タップリの返事をくださいました。

美達さんは、人をやる気にさせるのが、とても上手です。手紙を読むだけで、子供たちは目を輝かせ、前向きな気持ちになりました。なぜか、みたっちゃんに言われると、不可能な課題でも挑戦する気持ちになり、しかもできそうに思えるようです。

実際、息子はそれまでクラブ活動ばかりで、机に向かったことがなかったのですが、高校受験を前にしてガラリと変わりました。みたっちゃんの励ましを受けて、実力よりワンランク上の地域ナンバーワン高校を受験しようと決めたのです。具体的な勉強方法もみたっちゃんから教わり、息子は無事、その志望校に合格できました。