それでも体重は減っていきました。90kg台から80kg台へ。そして7月31日の朝、体重計に乗ると、79.6kg。一瞬、数字を見直しました。80kgを切っていたのです。2004年の105kg以来、落としては戻りを繰り返してきた私にとって、80kgはいつしか大きな壁になっていました。
うれしくなかったと言えば嘘になります。ただ、以前のダイエットで目標体重を達成した時とは、少し感覚が違いました。「必死に我慢して、ついに勝った」という達成感ではなく、なぜ今回は、あれほど苦しかった「我慢」が少なかったのだろう。そちらの方が気になりました。
80kgを切った夜、フルコースを前に食欲が止まった
同じ7月31日の夜。仕事関係者との書籍企画の打ち合わせを兼ねて、麻布十番のイタリアンで会食がありました。朝に79.6kgを記録したこともあり、私は気分よく席につき、フルコースの一皿目、カルパッチョを口にします。最初の数口はおいしく食べられ、「今日は最後までいけるかもしれない」と思いました。
ところが数分すると、急に食欲がなくなりました。肉料理も、一口食べれば「うまい」と感じますが、それ以上食べられません。味覚を失ったわけでも、料理がおいしくないわけでもない。おいしいのに、食べたいと思わない。この違いが、自分でも不思議でした。
しかも、仕事上の大切な会食です。料理を楽しみながら話を深めるはずの席で、自分だけほとんど食べられない。そのとき初めて、「食欲がないこと」もまた、生活上は考えなければならない問題なのだと実感しました。
体重が落ちることだけを考えれば喜ぶべきことかもしれませんが、生活はダイエットだけでできているわけではありません。「何kgやせた」という数字だけでは語れない問題が、少しずつ見えてきました。
20年間、戦う相手を間違えていたのかもしれない
治療を始めてからの変化を経験して、私は20年間続けてきた「根性ダイエット」を少し違う角度から見るようになりました。
振り返れば、私は20年以上、太るたびに「また自分に負けた」と思ってきました。食べた自分を責め、今度こそと極端に食事を減らし、体重が落ちれば「勝った」と喜ぶ。そして、また戻る。その繰り返しでした。
今になって思うのは、もっと早く「意志が弱い」で片づけず、自分の食欲そのものと向き合えばよかったということです。私と同じように、「やせたいのに食べてしまう自分はだめだ」と責めている人がいるなら、まず、その自己採点をやめてもいいのではないでしょうか。少なくとも私は63歳になって、ようやくそう思えるようになりました。
2004年 105.0kg 記録上の最高体重
2026年3月 92.0kg 再び90kg台に
2026年5月20日 90.1kg 医師の診察のもと肥満症治療を開始
2026年7月2日 83.2kg 治療開始から約6週間
2026年7月31日 79.6kg 20年来の「80kgの壁」を下回る
【監修】国際医療福祉大学三田病院 糖尿病・代謝・内分泌内科部長 同大学医学部教授 坂本昌也
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