尿路結石は最も強い痛みをともなう病気の1つだ。男性7人に1人、女性では15人に1人が生涯に経験するといわれている。泌尿器科専門医の志賀直樹さんは「健康に人一倍気を遣っている、健康意識の高い人でも結石ができやすい。まずは食事を見直すことから始めてほしい」という――。(聞き手・構成=医療・健康コミュニケーター 高橋誠)
ソファに座り、苦しそうな表情で腹を押さえている人
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「体にいい習慣」が “石の芽”を育てていた

3000症例以上の結石手術を手がけてきた私の診察室には、「尿酸値も正常で、健康には人一倍気を遣っている」という方々が「ある日突然」担ぎ込まれます。

彼らが陥っているのは、「体にいいはずの習慣」が石を育てる、という盲点です。

手術で15mmの石を摘出した直後、高橋さん(編註:筆者)の腎臓には1.6mmの石灰化が見つかりました。これは再発ではなく、「石ができやすい状態」を腎臓が示したサインです。

近年はCTの解像度が向上し、こうした「石の芽」を早期に確認できるようになりました。生活習慣を見直すきっかけを、いち早く捉えられる時代になったのです。

結石は、尿管や膀胱ではなく、腎臓でできます。腎臓の尿細管や集合管などの壁で小さな結晶が生まれ、徐々に成長し、やがて尿路に現れます。このメカニズムは偶然ではなく、生活習慣と体質、遺伝が交差した結果です。

そして、もう一つ重要な視点があります。腎臓は「沈黙する臓器」だということです。心臓のように動悸を知らせるわけでもなく、胃のように違和感を訴えるわけでもありません。石がある日、尿管に落ちるまで多くの場合まったく症状が出ないのです。

腎臓は何も教えてくれない

つまり、私たちは自覚のないまま、「石の芽」を育てている可能性があります。血液検査の数値が正常でも安心はできません。腎機能が保たれているうちは、体はほとんど警告を発しないからです。

ビジネスの世界でいえば、目に見えないリスクが水面下で膨らんでいる状態でしょうか。決算書に異常が出たときには、すでに問題は進行しています。結石も同じです。痛みが出たときには、すでに石は完成しています。

だからこそ私は、「症状が出る前の管理」を強調します。痛みを経験してから慌てるのではなく、発症する前、兆しの段階で生活を微調整する。この発想の転換が、結石との向き合い方を根本から変えるのです。

結石の多くは、シュウ酸カルシウム結石です。シュウ酸は尿中でカルシウムと結びつき、結晶化します。問題は、このシュウ酸を多く含む食品が、いわゆる“健康食品”と重なっていることです。

アーモンドやカシューナッツ、高カカオチョコレート、緑茶。これらシュウ酸を多く含む食材自体が悪いわけではありません。

しかし「毎日」「習慣的に」「多めに」摂取すると、体内に入る総量は確実に増えます。私は患者さんにこうお話しします。「やめる必要はありません。頻度と量を調整してください」と。結石予防は、ゼロか百かではなく、バランスの問題です。