収量向上に触れないNHK
もう一つ、生産性向上のためにNHKが触れなかった重要な対策がある。
それは品種改良による単位面積当たりの収量(単収)の向上である。生産量を制限する減反政策のために、この方向での技術開発はタブーになった。農水省時代の先輩は、「財務省との予算折衝で『収量向上の技術開発は禁止だ』と言われた」と話していた。なぜなら、いくら減反補助金を出して水田を減らしても、面積当たりの収量が上がってしまえば、効果が減ってしまうからだ。さらなる補助金の増額とならぬように釘を刺されたのである。
同時にこれは、コメの品種改良に携わる研究者の仕事を奪う出来事でもあった。戦後の食料不足を経験し、コメの収量向上を志して、農業試験場の研究者になった友人は「国に夢を奪われた」と肩を落とした。トヨタに就職したエンジニアに、「燃費を向上させるな」というようなものなのだ。
今では、空から種まきしているカリフォルニアの単収は日本の1.6倍、1960年には日本の半分しかなかった中国に追い越されてしまっている。カリフォルニア並みの単収を実現すれば、コメの生産コストは1.6分の1、つまり4割も削減できる。
これが、収益が上がる農家のためだけでなく、価格低下の利益を得る消費者のためにも、生産量を1.6倍に増加することによる我が国の食料安全保障のためにも、必要かつ重要であることは自明ではないだろうか?
しかし、減反廃止、単収向上による米価の低下という論点は、NHKのタブーなのだ。番組を通して、コメの安定供給とは言っても米価の引下げが必要であるとはっきりと言わなかった。既得権者に遠慮する報道は公正な番組作りと言えるのだろうか?
最後まで触れなかった備蓄米の買戻し
農水省は9月18日に備蓄米の買戻しを実施する。14日の放送なのに、なぜ番組は一切触れようとしなかったのだろうか?
21万トンの買戻しの対象は、昨年このほとんどを落札したJA農協である。史上最高のバブル米価となった25年産米で買い戻すことは、JA農協の救済策に他ならない。これを認めざるをえなくなることをJA農協と二人三脚で活動してきたNHKは忖度したのではないだろうか?
私は、高米価で備蓄米を買い戻すことによって大幅な財政負担が生じることに警鐘をならした(「コメ価格を下げるためでも農家救済でもない…鈴木農水相が「JAが9割超落札した備蓄米」を1年半で買い戻す理由」)。18日の買取り米価がどうなるか、結果を待ちたい。
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