零細農家の残留が農村を衰退させる
需要の拡大と並んで生産性向上を農業の課題として指摘していた。
しかし、「大規模化を批判して、小さな農家が淘汰されるのは好ましいことではないのではないか」と鈴木農水相に質問して、「すべての農家が大切だ」という結論で終わった。
大規模農家と小規模農家では2~3倍のコスト差がある。生産性向上という問題提起をしながら、その重要な方法である規模拡大は否定するという矛盾した番組になってしまった。
かつて都府県で標準的な規模だった1ヘクタールの農家は、機械化の進展で、今では年間30日も稲作農業に携わっていない。平日はサラリーマンで週末に少し農作業をするだけで小規模稲作はできるようになった。また、彼らは兼業収入等がある。
1ha未満の農家が農業から得ている所得は、何十年もマイナスである。しかし、こうした農家の農地を集約して、30haとなる集落なら、1人の農業者に全ての農地を任せて耕作してもらうと、1万5000円の米価でも耕作者の所得と地主が受け取る地代を合わせて、集落全体で約2000万円の所得になる(※4)。これをみんなで分け合った方が、集落全体のためになる。
大家への家賃が、ビルの補修や修繕の対価であるのと同様、農地を貸す側にも役割がある。地代収入を得る地主が、地域で農地や水路の維持管理を担う仕組みを築けばよい。耕作者が生産に専念し、地主がその基盤を支える。こうした分担が、集落を維持することにもつながる。地主には地主の役割がある。健全な店子(担い手農家)がいるから、家賃でビルの大家(地主)も補修や修繕ができる。
このような関係を築かなければ、農村集落は衰退するしかない。農村振興のためにも、農業の構造改革が必要なのだ。
※4 2023年まで(米バブルが起こる前)の標準的なコメ価格(玄米60㎏の相対取引価格が約1万5000円)と24年産米と同等の生産コストだった2018年の農林水産省「農業経営統計調査」を指標として使用。30haの農家所得は地代を支払った後の金額で1600万円。これに地代の相場は10aあたり1万5000円、30haだと450万円を加算。
農村の構造改革は進んでいる
では、小規模農家は実際にどのように対応してきたのだろうか?
結論から言えば、自ら農業を縮小・離農し、大規模農家に農地を貸す「構造改革」が現場ではすでに進んでいる。
1985年から2025年までの40年間で、販売農家は331万戸から79万戸へ減少した。一方、農家には該当しないものの農地を所有する「土地持ち非農家」は、44万戸から150万戸へ増えている。
2020年の統計では、水稲作付面積のうち5ヘクタール以上の大規模農家が農地面積の5割超を占め、1ヘクタール未満のシェアは16%にすぎない。「小規模農家を守れ」という既得権益グループの掛け声とは裏腹に、土地(農地)持ち非農家は増加し、農地の集積は着実に進行している。
これからも小規模農家が赤字の農業から撤退し、農地が大規模農家に集積されれば、より効率的な生産で米価は下がり消費者が利益を得る。農地を貸した元農家も地代収入を得られるため、理にかなっているのである。



