「ファミレス以外」もM&Aする狙い

「プラスαで注文されるお客様が多いので、定食以上の平均単価になります。それでいてお客様自身で追加しているため『高い』という印象を受けないんです」(北氏)

ここまで見てきたように、おいしい魚の定食を安くスピーディに提供できることが、しんぱち食堂のブランドとしての大きな魅力となっている。毎日食べても飽きないので、第二の食卓として利用しているリピーターもいるだろう。すかいらーくにとっては、食のインフラとして大きな可能性が感じられたわけだ。

これに加えて、すかいらーく独自の理由もあった。

すかいらーくはファミレスを展開して成長してきたが、近年ではファミレスに限らず、幅広く業態開発を行っている。さらに、2025年からの中期計画では、2027年までにM&Aを3〜5件行うことを公表している。

渋谷道玄坂店で、「さば文化干し定食」(1232円)をご飯半分にして(55円引き)、ネギトロ99円の小鉢を追加して、総額1276円
撮影=プレジデントオンライン編集部
渋谷道玄坂店で、「さば文化干し定食」(1232円)をご飯半分にして(55円引き)、ネギトロ99円の小鉢を追加して、総額1276円
吉祥寺店で、朝限定の「さば文化干し定食」(682円)をご飯半分にして、生卵(33円)と納豆(33円)を追加して、総額693円
撮影=プレジデントオンライン編集部
吉祥寺店で、朝限定の「さば文化干し定食」(682円)をご飯半分にして、生卵(33円)と納豆(33円)を追加して、総額693円

買収額110億円でも「よい買い物」

「これはすかいらーくを大きくしようというよりも、新たな価値を提供したいという方針です。ファミレスは郊外ロードサイドで広がってきましたが、新たに、人の集まる都市部や駅前立地に合う業態をポートフォリオに加えたいと考えています。しんぱち食堂は20坪あれば出店できるのでぴったり。滞在時間も20〜30分で回転率も高い。また、当グループにないジャンル、価格帯であったことも魅力でした」(北氏)

だからこそ、110億円という買収額をかけてでも傘下に入れたいブランドだったのだ。素人目には巨額に思えるが、投資の専門家が見れば「よい買い物」であるのはすぐわかるという。「出店を加速する時期の業績は出店コストがかかるため数字が悪く見えますが、その分を割り戻して判断すれば、しんぱち食堂には十分に見合う企業価値がありました」(北氏)