部下がAIを使うほど、上司の負担が増える
職場では、この弊害は「上司」への負荷となって現れる。
パーソル総合研究所の調査で上司の負荷を尋ねると、部下がAIヘビーユーザーである上司ほど、「部下のAI作成物に誤りがある」「部下がAI作成物の内容を理解できていない」という項目が突出して高い。自分が提出したものの中身を、本人が説明できない。この現象を、すでに現場の上司の側は日常的に目撃している。
このまま、レベルの低い成果物と、本人の自己認知が乖離したまま年次だけが上がっていけば、いずれ「AIなしでは何もできないが、自信満々に仕事をする」層が組織に堆積することになる。
学びが実践から「机上の勉強」に偏る
最後の類型は、学習行動そのものの変質である。
パーソル総合研究所の調査は、2025年10月時点からAIを継続的に利用している層を半年後に追跡調査している。そこで見えたのは、学びの重心の移動だった(※9)。
継続利用層で顕著に増えた学習行動は、「AIの使い方・活用に関する学習」、「研修・セミナー、勉強会等への参加」、「趣味の読書」といったインプット型の学習である。
一方で減ったのは「大学・大学院・専門学校への通学」、「資格や技能取得のための学習」、「副業・兼業・社外の組織での業務への参加」。いずれも具体的な行動を伴う、実践型の学習である。
そして同じ期間、この層のアニマル・スピリット(衝動的な好奇心)の平均値はほとんど動かなかった。
AIを使い続けた半年間で、学習は内向きになり、「机上の空論」に寄っていくことが示されている。これはまさに、AIへの依存が総合的に行動に現れているものとして見ることができる。そして、AIのカギである動物的な好奇心は、この間に伸びていなかった。
「AIを使わせれば、そのうち人が育つ」「仕事を実地で積み重ねれば、だんだん一人前になる」という育成観は、データの上では支持されない。AIの利用時間は、AI環境で必要な能力の育成時間ではないのである。
※9 Aslanov, I., Felmer, P. & Guerra, E. (2025) “Overconfidence without Understanding: AI Explanations Increase the Illusion of Explanatory Depth,” OSF Preprints,10.31234/osf.io/8psgf_v1.



