大半の国民は新首都の住宅に手が届かない
エジプト政府は、増え続ける人口を収容し、カイロの過密と大気汚染を緩和する必要があると主張する。CNNによると大カイロ圏の人口は、2200万人に達する。
新首都の建設を進める側は、この数字を根拠に挙げる。ACUDのハーリド・アッバース会長は、新首都が社会のあらゆる層の需要に応えると主張した。
だが、その「あらゆる層」に住宅は行き渡っていない。イギリスの都市理論家でオックスフォード大学研究員のニコラス・シムシック・アリーズ氏はノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥングで、カイロには空室率が50%に達する地域があると指摘した。エジプト国民の約8割は、ニューカイロや新首都の集合住宅に手が届かない。
アリーズ氏はCNNの取材で、問いの立て方が違うと論じる。「カイロの過密は、制御不能な人口増加だけの問題ではなく、人々が(地方の)出身地でまともな生計を立てられるかどうかの問題でもある」。
地方に働き口がない限り、都市部への流入は止まらない。投資のごく一部を既存の都市に振り向けるだけで「過密はあっという間に消える」と同氏は言う。
「もしも10年前、建設と不動産ではなく、教育や保健、研究、産業、技術に投資していたら」。エジプト経済社会権利センターの弁護士マレク・アドリー氏は、アフリカン・ビジネスの取材にそう問いかけた。過密は深刻だが、新首都を建設したところで、問題の解消にはつながらない。
懸念される新首都のゴーストタウン化
今年7月、職業軍人出身のエルシーシ氏が10年以上ぶりに軍服姿で公の場に立った。場所は新首都、国家戦略司令部「オクタゴン」の開所式だった。
UAE英字紙のナショナルが伝えた演説で、エルシーシ氏はオクタゴンが新首都に置かれたのは「偶然ではない」と語った。2013年、イスラム主義勢力がカイロの最高憲法裁判所などを包囲した。「二度とそうしたことが起きないよう、国家は首都を離れねばならなかった」という。
抗議の声の届かない場所に、政府や軍の機能を置くための都市ではないか――。批判者たちのこうした指摘を、当の大統領が設計の狙いとして認めた形だ。
政府がデモを逃れ、軍が建設の管理手数料や賃料で利益を上げる新首都で、人々の暮らしは置き去りになっている。現在は新首都建設の第1フェーズがほぼ終わった段階だが、残る3フェーズはほぼ手付かずだ。
今後も住民優先の視点は期待しにくい。DAWNが取り上げる米シンクタンク中東民主主義プロジェクトの報告書は、新首都は「砂漠に増えていくコンクリートの骸として、埃をかぶったまま放置される」おそれがあると述べ、ゴーストタウン化の危険性を警告する。
失敗した過去の22の新都市のように、人けのない地帯に成り果てるのか。すべては、車と軍を中心に据えた発想から、人間中心の設計へ転じられるかに懸かっている。


