水源は増えないのに、水を配る先は増える
別の問題もある。厳しい砂漠の中で、新首都はいかにして人々の命をつなぎ止めるのか。
砂漠のただ中に、ナイル川を模した川が造られる計画だ。新首都の目玉となる人工河川「グリーンリバー」だ。CNNによれば、すでに造園工事が始まり、面積はニューヨークのセントラルパークの2倍に達する。
衛星都市を所管する政府機関、新都市共同体庁が掲げる売り文句は、緑地だけではない。建物の屋上の50%に太陽光パネルを設置し、アフリカ最大の地域冷房施設も導入するという。
だが、環境団体エコリスの創業者兼CEOのアスマー・アリー氏は、こうした施策の「効果はごく限られ、見せかけにすぎないかもしれない」とアフリカン・ビジネスに語る。
とりわけ欠けているのが、水をどう確保するのかという視点だ。第1期の敷地の60%は緑地や緑化関連の用途に充てられる計画だが、国全体に広がる水不足のなかで、これだけの緑を維持するため、いかにして水を確保するのか。その説明はない。
水源を示さないまま進む計画は、新首都だけではない。ナイル川の流量は年々減っているが、政府は2025年、肥沃なデルタ地帯から水を引き込む新都市「ジリアン」の計画を発表した。米国際政治誌のフォーリン・ポリシーによれば、引き込む量はナイル川からエジプトに配分された年間取水枠の約7%にのぼる。
使える水は増えないまま、配水先だけが増えていく。新首都計画の発表から11年が経つが、水はどこから引くのか、その答えは示されていない。
空き家だらけでも軍が儲かる仕組み
数々の問題を抱えながら、新首都の建設が止まらないのはなぜか。空室が問題になるのは、誰かがそれで損をするときだけだ。新首都には、その「誰か」がいない。
住宅は足りていないのではなく、明らかに余っている。カーネギー国際平和基金によると、エジプトで公的部門と正規の民間部門が供給する新築住宅の88%は、国内各地の新都市に建つ。2024年半ば時点で、省庁の移転以外も含む新都市の数は49に達したが、そこに暮らす人は計170万人にすぎない。
それでも建設は止まらない。事業主体が、入居者からの収入を当てにしていないからだ。新行政首都都市開発会社(ACUD)の株式は、CNNによると軍が51%、住宅省が49%を保有している。
カーネギー国際平和基金は、軍が事業予算から5〜35%を管理手数料として差し引いていると、政府・企業関係者の証言をもとに伝えている。新都市の家々が実際に住民で埋まるか否かにかかわらず、次々に建設を続けること自体が、軍の収入源になる。
そのため、もはや歯止めをかけられるのは軍外部の組織だけだ。CNNによると、国際通貨基金(IMF)は2024年3月、融資枠を30億ドル(約4770億円)から80億ドル(約1兆2700億円)へ拡大する条件として、インフレ抑制と債務の持続可能性のための経済改革を求め、そのなかに「インフラ支出を減速させる新たな枠組み」を挙げた。
だが、ACUDは開発が影響を受けることはないと主張する。こうして、唯一の歯止め役となりうる外圧も、いまのところ機能していない。

