独立を考えるなら「節目」を夫婦で決めておく
会社員は、雇用や給与、社会保険といった待遇面で守られているだけでなく、システムや縦横のつながりなどのバックアップ体制が整っています。すべて「持ち出し」の自営業と、労働条件は天と地ほど異なります。同じ定年後の働き方でも、100m走でいえば会社員は90mからのスタート、自営業は0mからというイメージで、走り出す条件からして違うのです。
こうした現実を踏まえない上に、パートナーである妻ときちんと話ができていない、経済的な基盤が確立できていないという状態で、希望だけで走り出してしまうケースが少なくありません。
借金をしてでもやる、という割り切りがもともと共有できていればまだしも、見通しの甘いまま始めてしまうと、貯蓄はあっという間に消えてしまいます。
大切なのは、「3年やって芽が出なければ、働き方を見直す」「売り上げがいくらに届かなければ軌道修正する」といった節目や基準を、始める前に夫婦で決めておくことです。
1年に一度は進捗を夫婦で確認し合う機会を設けるのもよいでしょう。同じ仕事を始めても、うまくいく人とそうでない人に分かれます。同じ難関の実務系の資格を持ちながら、手堅く稼げる人と、持ち腐れで全然稼げない人にはっきり分かれます。経験則で言えば、だいたい3年のうちに芽が出ない人は、その先も厳しいことが多い。
退職金や年金は、夫婦どちらか一方が勝手に使っていいものではなく、二人の老後を支える共有資産。夢を追う自由と同じだけ、それを支える家計への責任も、夫婦で分かち合う必要があるのです。
なお、浩一さんが独立開業せず、打診された再雇用を蹴らなければ、60〜65歳の間、手取りで月25万円プラス、ボーナスで年100万円を得られていたそうです。5年間で2000万円入るはずが、1円も入らないだけでなく、逆に赤字や経費ばかりを垂れ流した。そして、頼みの綱である妻の信頼も失い、今後の夫婦の関係も流動的に……。
浩一さんにとって「講師の夢」はずいぶん高くついてしまいました。



