拭えぬ「出来レース」への疑念

また、この他のルートでの既設区間建設投資額は以下の通りとされていた。

小浜・亀岡ルート、米原乗換ルート、湖西ルート(新設・改軌ともに)】
約16兆1000億円

小浜・舞鶴ルート(京都経由・亀岡経由ともに)】
約14兆3000億円

※「小浜・舞鶴ルート」は、ルート変更申請期間2年を含んでおらず、基準年の先送りを5年に留めたことにより、比較的安めになっている。

ただし、B/C評価(費用対効果)は建設期間+開業50年で評価されるため、教科書通りにやれば7年後の着工なら7年後を基準年にするのは、「個別評価」であればあり得るかもしれない。だが、これを「一体評価」という形で、建設費支払済の区間にまでそのまま拡大適用したことでおかしなことになった。

その結果、基準年先送りがいらない環境影響評価が済んでいるルートがほぼ絶対勝利してしまう“出来レース”になる。国交省の五十嵐徹人・鉄道局長が謝罪に追い込まれた「おのずから結論は(小浜と)決まっている」発言の真意はここにあったのかもしれない。

日本維新の会の前原前共同代表(左手前から2人目)らに謝罪する国交省の五十嵐徹人鉄道局長(右手前)=2026年5月14日午後、国会
写真提供=共同通信社
日本維新の会の前原前共同代表(左手前から2人目)らに謝罪する国交省の五十嵐徹人鉄道局長(右手前)=2026年5月14日午後、国会

完成年を軸に再試算すると…

ならば、既存区間の建設投資額は「ルートや基準年にかかわらず、完成年を基準に固定化」すべきではないだろうか。そうでなければ、本件は「指標の計算方法が不適切であるという純粋に科学的な問題」と、「それによって不明朗な意思決定が行われたという政治的・社会的な問題」があるといえるのではないか。

もし「小浜」以外の全ルートでも、既設区間の建設投資額を「小浜・桂川ルート」と同額に揃えた場合の「一体評価」はどうなっていただろうか。算出してみた。

なお、既設区間の維持改良費部分についても基準年先送りで盛られているのではないかという指摘もあると思うが、維持改良費はこれからもかかる費用であるため、従来の7年先送り試算通りとした。

また、便益についても事業開始年度を尊重し、7年先送りのまま試算とした。国交省が詳細な計算内容を発表していない現時点では、いろいろな計算方法が考えられるので、各ルートの値を計算するのは難しく、概算値として見ていただければと思う。