もし、結婚相手がモラハラ夫やモラハラ妻だったら、どうしたらいいのか。交際・結婚したての頃は猫をかぶっている相手でも、時間の経過とともにその本性がむき出しになるケースは少なくない。さらに相手がハラスメントの度合いが悪質である時、生活を営むことが困難になる。その場合、どのように対処し、誰に助けを求めればいいのか。ノンフィクションライターの旦木瑞穂さんが現在40代の女性当事者を取材した――。(前編/全2回)
息子2人を連れてモラハラ夫から昼逃げ
車のハンドルを握る手はじっとり汗をかいていた。
関西在住の水沢彩音さん(仮名・40代)は4年前の春、大手メーカーに勤める夫が仕事で不在の時間に、ついにプランを実行に移した。荷物を軽自動車に積み込み、実家と自宅の間を何往復もした。それは、夫から逃げ、別居を始めるための決死行だ。
この日のために、水沢さんは約3カ月間、着々と準備し、成功させた。しかし、解放感に浸る間もなく、次々に困難に直面することになる。
果たしてどんな苦難がやってきたのか。そもそも彼女はなぜモラハラ夫と結婚してしまったのか。もろもろ探っていくと、その答えは生い立ちも関係しているらしいことが判明した。
酒浸り父親と朝晩警備員として働く母親
水沢さんの生い立ちは苦しみの連続だった。
「父はアルコール中毒で、朝からお酒を飲んでいました。ほとんど毎晩、外へお酒を飲みに行き、借金をしてくる。夜中に帰ってきては寝ている母を起こして怒鳴る。両親の喧嘩はほぼ毎日で、布団をかぶって耳を塞いでいました」
水沢さんが小学校に上がると、母親は警備員として朝と夜に働きはじめた。
夜に母親が不在のことが多くなると、水沢さんは父親にスナックなどに連れて行かれ、夕食はいつもそこで食べた。

