生活保護は日本国民に認められているセーフティーネットだが、申請方法や受給基準に関してはわかりにくい部分も多いと指摘される。ノンフィクションライターの旦木瑞穂さんが、モラハラ夫と離婚調停中で2人の子供を育てている40代の女性のケースを取材した――。(後編/全2回)

モラハラ夫から逃げた

賃金はあまり上がらない一方、物価が異常に高騰する昨今、生活に困窮する人の増加が予想される。日本にはセーフティーネットの「生活保護」があるが、これはどんな制度なのか。どんな人が利用でき、希望者は支給を受けられるのか。また受給後はどんな生活をして、生活保護からどのように卒業して再び社会に戻っていくのか。そうした実態を明確にすることで、不正受給を含む生活保護に対する批判や恐怖を減らし、救われる人や機会を増やしていきたい――。

関西地方に住んでいる水沢彩音さん(仮名・40代)に生い立ちを尋ねると「両親は私が物心ついた頃にはすでに不仲でした」と答えた。

父親は毎日、浴びるように酒を飲んだ。勤労意欲がまるでないため、母親は朝から晩まで働き詰めだったが、小学生の水沢さんに、父親に関する愚痴をくどくどと話した。「あんたができたから籍を入れた」と聞かされた水沢さんは、「生まれてこなければよかった」と自分を責めた。

すでにだいぶ飲んでいる男性がグラスに手をかけ、片方の手でおでこを支えている
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父親と離婚した母親は、水沢さんと弟とともに暮らすように。水沢さんは高校卒業後、アルバイトを掛け持ちし、月数万円の収入は母親へ渡した。ひとり暮らしをしたかったが、経済力のない母親を放って出ていくことははばかられた。

それでも、いいこともあった。勤務先のバーで大手メーカー勤務している紳士然とした男性客と出会い、29歳の時に結婚したのだ。2人の子供にも恵まれようやく幸せな時間が到来と思いきや、水沢さんがうつ病で苦しむ姿を見て見ぬふりの夫は、家事も育児も全くしなかった。そこで「このままでは私も子供たちは潰れてしまう」と、離婚を決意。「法テラス」の弁護士の助けを得て、夜逃げならぬ昼逃げをする――。

口が悪く過干渉な祖母

昼逃げに成功し、実家で、母親・祖母・子供2人で暮らし始めてから1カ月ほど経ったある日、4歳の次男が風邪気味で機嫌が悪く、泣いていたところ、「今日は泣き方がしつこいなぁ……」と祖母が一言。

さらに長男が帰ってきて一緒に遊んでいたところ、「次男くん、今日はビービー泣いてアホやったなぁ。全然賢くなかったわ。おばあちゃん、アホな子は嫌い!」と言い放つ。

びっくりした水沢さんは、すぐに次男に「ママは大好きだよ〜」と言って抱きしめた。

「なんだか祖母は2人目の夫みたいでした。生きてきた時代が違うとはいえ、ひ孫に『嫌い』って言っちゃうの? しかも体調不良で泣いてたのに? と腹立たしさを通り越して呆れてしまいました」

水沢さんは実家を出ることを考えていた。

「母には『離婚が成立して落ち着くまでいればいいじゃない』と言ってもらっていました。確かに実家にいれば、子どもたちを見てもらえたり、体調不良のときは本当に助けられています。でも実家には祖母がいるので、私がひとりになる時間はありません。ひとりになるために出かけることが多くなったら、『遅かったわね』『どこ行ってきたの?』と質問攻めにあい、(モラハラがひどかった)夫とかぶって精神的にキツく感じるようになりました」