世論調査は、なぜ結果を予測できるか
イギリスも日本もそうですが、まともな民主主義国家であれば、地方選挙や国政選挙が定期的に行われます。その際のニュースなどでは、まだ開票が十分に進んでいないにもかかわらず、各候補者の当選や落選が報じられます。どうしてそんなことが可能なのでしょうか。
人々がどのように投票するかを選挙前に知りたい場合、一つの方法は、すべての有権者に質問することです。もちろん、人々が必ずしも真実を語るわけではないという事実は、世論調査を行うにあたって考慮しなければならない要素の一つです。そして、すでに皆さんがお気づきの通り、それはあまりにも非効率的です。これは選挙当日に行われる出口調査であっても同じことです。
そこで登場するのが統計学です。統計学を理解するうえで重要なポイントの一つは、「ある推論を行うために、どれだけのデータを集める必要があるか」を把握することです。どれほどの量のデータをサンプルとして採取するかは、多くの場合、誤差の許容度、つまり間違いを犯す許容度に左右されます。
データの統計分析を行う際は、(*基準となる誤差の許容度は)サンプルとして選ばれたいくつかのデータが示す値が、そのサンプルの元となっている母集団全体の真の値から5%以内の誤差に収まっているというものです。つまり、この基準内では、20回の世論調査を行ったうちの1回は間違った結果となり、(*正しい19回は)最大で5%の誤差が生じることになります。
小規模なサンプルから予測ができる
読者の皆さんの中には「20回のうち1回という基準では、あまりにも間違いが多すぎる」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、科学的有意性(偶然に起こったのではなく、統計学的に意味がある)という点で、この基準が広く採用されています。
さて、子どもの頃の私には、とてもお気に入りのCMがありました。そのCMでは、10匹の猫のうち8匹がある特定のキャットフードを好むとされていました。しかし、イギリスに生息する約700万匹の猫の中で10匹というのは極めて少ない数です。では、具体的に何匹の猫の好みを知れば、「10匹の猫のうち8匹が特定のキャットフードを好む」と言えるのでしょうか。
実は、約700万匹の猫の個体群を母集団として、そのうえで約250匹の猫に尋ねれば十分であることが(*統計学の計算式によって)判明します。これは驚くほど小さい数字だと、私は思います。
ですから、選挙前に「これは1000人を対象とした世論調査です」と書いてあるのを見かけて、「でも、私は人口5000万人の国に住んでいるのに、それで一体どのような示唆が得られるの?」と思うかもしれません。しかし、これこそが数学が秘める底力なのです。一見すると小規模なサンプルから、これから実際に起こることについての正確な予測を行うことができます。

