外見の美醜は、何にどこまで影響を及ぼすのか。精神科医の和田秀樹さんは「かつて『人は見た目が9割』がベストセラーになった。このキャッチーなフレーズが独り歩きをしたが、出典元の研究にある『言語情報7%・聴覚情報38%・視覚情報55%』という『7-38-55ルール』の意味するところは別にある」という――。

※本稿は、和田秀樹『脳は見た目から逃れられない』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

プレゼンを行う精悍なビジネスマン
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「人は見た目が9割」の落とし穴

「見た目で判断するのは良くない」と頭ではわかっていても、脳への刷り込みと、人間が持つ同調傾向などが複雑に合わさることで、外見への反応はほぼ自動的に起動します。そして社会はその反応を制度化し、強化し続けています。

こうした外見への偏重をある意味で「正当化」してきた言葉があります。それが「人は見た目が9割」というフレーズです。

2005年に出版されたこのタイトルの本は、200万部を超えるベストセラーになりました。しかし実際に読んだ人の数と、「聞いたことがある」という人の数には、大きな開きがあります。

200万部と聞くと大変な部数のように思えますが、日本の人口から考えれば、実際に手に取った人は1~2%台にすぎません。

大多数の人はこのタイトルだけを耳にして、「なるほど、やっぱり見た目が大事なんだ」という印象を持ったまま、その中身については知らずにいます。

この「知っているようで知られていない」状態が、外見への過剰な執着を正当化する根拠として長年使われてきました。

「見た目が9割」という言葉が独り歩きした結果、「だから外見に投資するのは合理的だ」「見た目の良い人が有利なのは当然だ」という解釈が社会に広まってしまったのです。

では、この本や、基になった研究は本当に、そんなことを言っているのでしょうか。