第一印象が有効な場面、そうでない場面
「見た目が9割」という言葉はまた、「第一印象が大切」という話とも混同されやすく、「第一印象は大切。外見が良ければ第一印象も良くなる。だから外見が9割」という三段論法で解釈されがちです。
しかし、第一印象と外見の美醜は、切り離して考える必要があります。確かに第一印象は速く、強く、記憶に残ります。脳は初対面の相手に対して、ほんの数秒で判断を下します。これは、ハロー効果と呼ばれる認知バイアスと深く結びついています。
外見に関する一つの印象が、その人全体の評価に波及していくのです。
しかし、第一印象が有効な場面と、そうでない場面があります。
短時間の接触で判断が完結する場面、たとえば、街で見かける人や、初対面の数十秒では、第一印象は確かに大きな力を持ちます。
短時間の接触のみの人間関係、一夜の遊び相手を選ぶ、憧れのアイドルを推すといった場面では、外見から受ける印象だけで判断しても、それによる実害はほぼないか、あっても比較的小さいでしょう。
「楽しい時間を過ごすだけなら、第一印象のいいイケメンや美女を選んで、ただ顔を見て喜んでいればいい」という話であれば、それはそれで目的に沿って自分本位に完結しています。
反対に結婚・ビジネス・選挙という場面では、そうもいきません。これらは長期的な利害が複雑に絡む判断だからです。
生活を共にする相手を外見だけで選んだ結果、女癖が悪かった、仕事ができなかった、価値観が合わなかったというケースは、枚挙にいとまがありません。
ビジネスパートナーについても同様で、第一印象だけで信頼を置いた相手に裏切られるという経験は、多くの人が持っています。
アイドルの人気投票と選挙は別物
特に、「アイドルの人気投票」と「選挙」は、まったく別の行為です。推しのアイドルを選ぶのと、自分たちの生活を左右する政治家を選ぶのとは、必要とされる情報の質も量も、本来まったく異なります。
ところが実際には、選挙でもアイドルの人気投票と似たような基準が機能してしまっています。「この候補者はなんとなく好感が持てる」という視覚的・直感的な印象が、政策の内容を上書きしてしまうのです。
つまり、アイドルを選ぶときには許容される判断基準を、自分たちの生活を左右する重要な意思決定の場面に、そのまま持ち込んでしまっているのです。これは、明らかな外見至上主義における弊害であり、問題点でしょう。

