「納期2週間」の中国市場がYKKを変えた

一方、最大市場である中国でも、ボリュームゾーンへの挑戦によって、YKK自身の仕事の流儀は大きく変わった。大谷社長は「今では中国市場は世界で一番厳しい市場です。QCD(品質・コスト・納期)の要求はとても厳しく、すべてに対応できないとライバル社に負けてしまう市場です」と指摘する。

とりわけ納期は急速に短くなった。かつてアパレル業界では、1年後のシーズンを睨んで新商品を企画することも珍しくなかった。ところが、最近の中国では、発注から納品まで2週間というケースもあるという。流行の変化は目まぐるしく、アパレルメーカーは在庫を抱えたくない。中国企業からの仕様変更を求められるたびに日本に持ち帰って対応していては、とても間に合わない。

そこでYKKは、中国企業との連携を深めていった。

ファスナーをつくる基本的な生産設備は、現在でも富山県黒部市で内製したベースマシンを使っている。一方ファスナーの周辺加工は、いまではほとんど中国の協力企業との連携が欠かせなくなった。

「今の中国には技術力が高く、納期も早いサプライヤーが多く存在している。そうした中国企業との連携なくして中国ビジネスは成り立たない」(大谷会長)。

コイルファスナー
画像提供=YKK
コイルファスナー

進化した中国の製造業がYKKを強くした

中国企業との連携関係が広く、深くなっていった背景にも、YKKが過去10年以上にわたってボリュームゾーン攻略に取り組んできたことがある。

中国、ベトナムでの勤務が長い事業戦略本部長の敷田透取締役は「ボリュームゾーンの輸出向け商品をつくっていた中国系アパレルメーカーが2010年半ば以降、外資系企業を凌ぐ規模となり、質的な向上も果たした」と話す。

中国の製造業の進化とともにYKKへの要求も厳しくなった。またその要求に応じることでYKKが進化したと敷田氏は受け止めている。(後編に続く)

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