最高級ファスナーから「1000円ジーンズ」へ

「ハイエンドに逃げるな!」とは、高付加価値品を捨てるという意味ではない。イタリアのファッションブランド市場など、欧米メーカーの牙城を崩してきた高級ファスナー事業はもちろん死守する。一方、これから成長する新興国の巨大市場を中国などのメーカーに明け渡してしまえば、かつて欧米メーカーがたどった運命を、今度はYKK自身が歩むことになりかねない。

だからYKKは、高付加価値品と低価格品のどちらか一方を選ぶのではなく、両方を取りにいった。

その戦略を象徴するのが、現在の松嶋耕一社長のキャリアだ。松嶋社長は入社7年目の1998年にYKKイタリア社に赴任し、高級ブランド品向けの最高級ファスナー「EXCELLA」の立ち上げに参加した。当時は門前払いだった欧州の高級ブランド市場で、最高級ファスナーを売り込んだ。