沖縄の自立を阻む構造

では、グリーンランドのように自治権を拡大すればすべてが解決するのか。

両地域の基地問題を比較した高橋美野梨・北海学園大学准教授とデンマーク国際問題研究所(DIIS)のウルリック・プラム・ガド氏の共同論考は、そう単純ではないことを示唆する。

同論考によれば、自治政府という大きな主語が外交で存在感を高めるにつれ、基地の間近で暮らす周辺住民が抱える放射能汚染への不安や土地利用の課題は、かえって議論の蚊帳の外に置かれてしまったという。

政治的な権限を上のレベル(自治政府)で手に入れると、「国づくり」というマクロな視点が優先され、実際に現場で被害を受ける住民の小さな声が届きにくくなるという皮肉な現象が起きているのだ。

もう一つ見過ごせないのが、政治的権限を得ても、それを支える経済の足腰が伴わなければ真の自立には届かないという現実だ。グリーンランドは将来的な独立を目指しているが、歳入の約半分をデンマークからの交付金に頼り、産業の大部分を水産業関連が占めている。

これに対して沖縄には、観光、IT、農業、近海の資源、アジア市場との近接性など、はるかに多様な経済的優位性がある。にもかかわらず、その可能性を対外的な交渉力に変える仕組みが育ってこなかった。一地方自治体として、事実上、基地受容と引き換えに振興予算を与えられるという出口のない依存の構造が、自立の芽を摘み続けてきた側面は否めない。

首都ヌークの中心部に移転した米国総領事館が入るビル
筆者撮影
首都ヌークの中心部に移転した米国総領事館が入るビル。影響力拡大を急ぐ米国の象徴だが、開館日当日は抗議デモが起きるなど地元の反発も招いている。

「この空港をどう使うかは、私たちが決める」

こうした条件の違いを踏まえれば、グリーンランドの経験は、そのまま沖縄が抱える課題の処方箋にはならない。だが、大国の論理に直面する一地方がどう立ち回るべきか、彼らの姿勢から学ぶべきことは多い。

9月、沖縄は県知事選挙を迎える。基地に賛成か反対か。本土復帰から50年以上にわたり、私たちが否応なく張り付かねばならなかったこの対立軸に、もはや解決策は存在しない。言葉をすり替えられ、手続きを迂回された結果の責任は、沖縄の内側にはないからだ。

私たちが向かうべきは、空虚なスローガンの応酬から一刻も早く抜け出し、生活基盤を守り抜くための具体的な「手立て」を探る、内発的な連携基盤を構築することではないだろうか。那覇空港の有事使用による民間経済の逸失利益を独自に試算し、政府の「緊急時」という解釈に対して民間インフラの管理権を縛る独自の条例を模索し、振興予算に頼らない経済網を育てるという、実務的な防壁を築くことだ。

長きにわたり、決定の場から当事者が排除されてきた構造を、いかに切り崩していけるかの分岐点に立っている。国際情勢に翻弄され、ある日突然、私たちの空港が軍事的論理に奪われる状況を座して待つわけにはいかないだろう。

「この空港をどう使うかは、ここに暮らす私たちが決める」――。この一点において、平和的な交流拠点たる那覇空港を軍事拠点化から守り抜くことは、保守や革新といった従来の枠組みを超えて、私たちが「自立」や「自力」といった自治を考える上で、最も象徴的な命題になるはずだ。

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