グリーンランドと沖縄の類似点
地域のインフラや土地が、住民の頭越しに大国の地政学的な取引の対象として組み込まれていく構図は、いまや遠く北極圏にまで及んでいる。その最前線が、冒頭で触れた世界最大の島・グリーンランドである。
2019年、1期目の米トランプ大統領が「グリーンランドを買ってもいい」と放った一言に、国際社会は騒然となった。2025年の2期目の政権返り咲きとともに、トランプ政権の動きは本格化している。米政府は住民への一時金支給を打診したほか、中心都市ヌークの米領事館を拡大、7月のNATO首脳会議の会場では「グリーンランドは米国の支配下に置かれるべきだ」と公然と主張した。
背景には、気候変動によって新たに開けつつある北極海航路と、氷の下に眠るレアアースなどの未開発鉱物の存在がある。中国やロシアの進出を防ぐため、米国は同島にあるピトゥフィク宇宙基地(旧チューレ空軍基地)を対中露の防衛拠点として重視するようになった。
国際政治アナリストのイムラン・ハリド氏は寄稿記事で、米国のこうしたアプローチを「北大西洋の『沖縄化』」と表現した。
主権の体裁は本国デンマークに残しながら、実質的には軍事拠点や資源へのアクセスを米国が握る。日本の主権下にありながら米軍の前方展開部隊が集中する沖縄の現状が、事実上の「沖縄モデル」として北極圏に適用されようとしている、と喩えた。
人口6万弱の自治領でも大国に負けないワケ
なぜ大国はこの島に執着し、現地の人々はそれにどう向き合っているのか。実感を得ようと、筆者は6月、グリーンランドの首都にあたるヌークを訪れた。
グリーンランドの面積は日本の約6倍と広大だが、人口は約5万6000人で宮古島市とほぼ同規模だ。人口の9割近くを占めるのが、北極圏の先住民族イヌイットである。
現地で出会った、メディア関係で働くイヌイットの女性エスタさんは、トランプ氏による領有発言について「土地はイヌイット全員のものであり、個人で所有することはできない。なぜ他国が所有できると考えるのかわからない」と退けつつも、鉱物資源に食指を伸ばす大国についてはこう語った。
「利益をもたらしてくれるのであれば、彼らが資源を欲しがっても構いません。ただし、それは私たちのルールに従わなければなりません。環境を破壊しないこと、収入をきちんとグリーンランドに納めることです」
この毅然とした言葉の裏には、グリーンランドが大国の論理に飲み込まれず、対等な交渉のテーブルを築いてきた歴史がある。


