日本政府がごまかし続けた「事実」
グリーンランドの現状を紐解く前に、まずは那覇空港が直面している「有事使用」の背景を押さえておきたい。
この構造を解き明かしたのが、米軍基地政策を専門とする大東文化大学の川名晋史教授の研究である。
事の発端は、「世界一危険」と言われる米軍普天間飛行場の返還問題にある。市街地のど真ん中にあるこの基地を返還するため、日米両政府は1996年に「SACO(沖縄に関する特別行動委員会)」という協議機関を立ち上げ、返還の条件や代替施設について話し合った。
このSACO合意の過程で、重要なやりとりが交わされていた。米側は、機体故障などのトラブルを指す「緊急時(emergency)」と、軍事作戦や紛争局面を指す「有事(contingency)」を区別して併記し、当初から「有事」に対応できる長い滑走路の確保を返還の前提として示していた。だが日本政府は、これらを一括して「緊急時」と訳して国民に説明してきた。
さらに2006年の「在日米軍再編ロードマップ」において、英語の原文から「emergency(緊急時)」が消え、「contingency(有事)」のみに集約された後も、政府は相変わらず「緊急時」と訳し続けた。
米軍は最初から「有事の際の作戦拠点」として長い滑走路を求めていたにもかかわらず、日本政府は国民(沖縄県民)の反発を恐れ、「単なる機体トラブル時の緊急利用だ」というニュアンスで事実をごまかし続けてきたということだ。
沖縄本島が完全に孤立する
普天間の移設先とされる辺野古の新基地の滑走路は1800メートルと短く、米軍の主力輸送機を展開できない。その穴を埋め、有事の出撃拠点になり得る場所は、3000メートル級の滑走路と戦闘機を急停止させる設備が整っている那覇空港をおいて他にない。
「それが実現しない場合は、普天間基地は返還されない」という。これは、辺野古への移設という重い代償を払ってもなお、那覇空港の軍事利用を容認しない限り基地の固定化は免れないという、これまでの「負担軽減」の前提を完全に覆す事態である。
これが現実となったとき、具体的に何が起きるのか。「有事」に管理権が軍事に渡れば、民間定期便は一斉に締め出され、島は完全に孤立する。
急患搬送の命綱が断たれるうえ、県民のために巨額を投じて拡張した滑走路が、そのまま軍事ターゲットと化す。「住民の避難」と「軍の作戦」が衝突することで、国民を守るはずの防衛が、真っ先に逃げ道を塞ぐことにはならないか。

