自慢の技術力が低下している日産自動車
ものづくりの力、すなわち生産技術の面でも、日産自動車は実力を高められる可能性がある。もちろん、日産自動車は申し分ない品質のクルマを造れる生産技術力を現時点で備えている。ただし、世界トップレベルの生産技術力を持つと評価されているトヨタ自動車と比べると、コスト面をはじめ、その実力には開きがあるように見受けられる。
仮に追浜工場でトヨタ車を生産することになれば、既存の生産ラインや設備をそのまま流用するわけにはいかない。生産するトヨタ車に向けた生産ラインの変更や設備の改造、各種の調整などが必要になり、トヨタ自動車から生産技術に関する指導を受ける必要があるだろう。
そうなれば、日産自動車としては自社の生産技術力を磨く好機となる。というのも、これまで財務体質を良くしようとリストラを重ねる中で、日産自動車の生産技術の実力が徐々に低下している可能性があるからだ。
それを指摘するのが、原価低減の専門家であるVPM技術研究所所長の佐藤嘉彦氏だ。同氏は、いすゞ自動車の生産技術部門出身で、現役の時から国内外の自動車工場を数多く視察してきた経験を持つコンサルタントである。
2020年ごろに追浜工場を訪れた佐藤氏は、車両組み立てラインを見てこう疑問に感じたという。「これでトヨタ自動車に勝とうとしているのか?」と。
トヨタなら100分の1の価格でできるのに…
追浜工場には豪華な自動化ラインが組まれていた。数千万円もする搬送装置を組み込むなど、高額設備のオンパレードだったという。ところが、佐藤氏はその搬送装置に対し、「トヨタ自動車なら数十万円でできるだろう」と見た。「からくり」で十分対応できると感じたからだ。
からくりとは、電気や空気圧、油圧などを使わずに、重力や太陽光などを活用し、ばねやてこ、滑車などを利用して簡素な仕組みで動作する仕掛けのこと。手作りのケースが多く、導入費用を軽減できる上に、エネルギー代も浮かせる利点がある。トヨタ自動車もいすゞ自動車も、からくりの利用に長けている。
こうしたからくりをもっと積極的に導入すれば、日産自動車は製造コストを劇的に削減できると佐藤氏は指摘するのだ。ところが、日産自動車は「からくりの名の下に、コンピューター制御の自動化システムを導入していた」(佐藤氏)という。
決して、先端の自動化設備を否定しているのではない。そもそもトヨタ自動車も先端の自動化設備を積極的に導入している。だが、その一方で、からくりも徹底活用する。つまり、自動化設備とからくりを「適材適所」で使い分け、トータルでコスト競争力を追求しているのである。

