毎日赤字を垂れ流している状態だった

1961年に操業を開始し、「ブルーバード」や「キューブ」といった人気のエンジン車のほか、電気自動車(EV)「リーフ」やハイブリッドシステム「e-POWER」を搭載したハイブリッド車「ノート」などの生産を立ち上げた。

1つの生産ラインで複数の車種を組み立てられる「混流生産」や、自動化率を高めて無人化や省人化を進めるロボットの導入にも率先して取り組んできた。2025年までの累計販売台数は1780万台以上。海外工場を支援する「マザー工場」としての役割も担ってきた。

ところが、2025年7月時点の稼働率は「46%」(米調査会社S&P Global Mobility調べ)と低迷している。稼働率は8割を超えないと営業利益が出ないと言われる。毎日赤字を垂れ流しているような中で、日産自動車としては苦渋の決断を下さなければならなかったということだろう。

たとえ日産車を造らなくなっても、日本の自動車業界にとって貴重な生産拠点を有効活用しない手はない。可能性があるとすれば、世界販売台数を伸ばし続けているトヨタ自動車ではないか。

一部報道で海外メーカーとの共同生産や合弁会社の設立に向けた協議を行っているという真偽不明の情報が流れたが、日産自動車はその内容を明確に否定している。

従業員の雇用を守ることもできる

日本の雇用の維持や経済安全保障の観点からも、組む相手は日本の自動車メーカーのほうが望ましいだろう。それなら、日産自動車が追浜工場でトヨタ車を生産するビジネスを手掛けてはどうかという提案だ。

日産自動車の追浜工場の全景
写真=日産自動車
日産自動車の追浜工場の全景。神奈川県横須賀市にある。経営再建計画「Re:Nissan(リ・ニッサン)」で決定された閉鎖する7工場のうちの1つ。2027年度末に車両生産を終了する計画。

日産自動車がトヨタ車を生産すれば、日産自動車は従業員の雇用を維持できる。車体に付くブランドマークは変わるが、これまで培ってきたクルマづくりのスキルをそのまま生かして仕事を続けられるのだから、やりがいの面でも悪くないだろう。住み慣れた場所から離れずに済むため、従業員はQOL(生活の質)も維持できるはずだ。

日産自動車は追浜工場の従業員に対し、九州工場に転籍する場合、給与の何年か分の補償金を支給する提案を行っているという報道が2025年の年末に流れた。九州工場との給与水準の差を補うための措置のようだが、これは逆に、そこまで手当てしないと転籍したがらない従業員が多いということではないか。

現場で情報を共有する作業員
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです

トヨタ自動車からの受託生産という形になるため、日産車を造るほどではないにせよ、ある程度の利益率は確保できる。いや、日産車よりもトヨタ車の販売のほうがはるかに好調であることを踏まえると、安定した生産台数を維持できて利益は増える可能性が高いのではないか。稼働率80%以上を安定してキープできるなら、固定費を賄う心配をせずにしっかりと利益を稼げるはずだ。