アメリカもシンガポールも諦めて日本へ

彼らが目指したのは当初はアメリカやカナダ、シンガポールでした。しかし、トランプ政権は移民に対して厳しい対応を取るようになり、国内でのアジア人に対するヘイトも横行したため、アメリカ移住をあきらめる人が続出。カナダでも不動産取得を2年間にわたって禁止するなどの施策が採用され、脱出先の門戸は次第に狭くなっていきました。

牧野知弘『「外国人不動産」問題』(祥伝社新書)
牧野知弘『「外国人不動産」問題』(祥伝社新書)

シンガポールは華僑が多く住み、国家を動かしている国なので、アメリカやカナダよりも選択肢に挙がりやすいのですが、居住権の取得条件が厳しく、多額の資金が必要であることに加え、物価が高いこと、不動産取得にあたっても多額の税負担を強いられることなどから、移住のハードルが高い国です。

これに対して、日本は地理的に近いことに加え、2025年10月16日以前では、経営・管理ビザの取得要件がきわめて緩く、この制度を使って日本に拠点を構えることが容易であることがSNS上などで話題になり、アメリカやシンガポール移住をあきらめた中国人が富裕層を中心に日本に流れ込みました。

具体的には、資本金500万円で日本に法人を設立しさえすれば、自宅を事務所扱いにもでき、ペーパーカンパニーを作ることで日本への移住が実現できるものでした。

日本の「移住コスト」はまだまだ安い

さすがに、こうした「金で買えるビザ」しかも「破格に安いビザ」に対して、日本政府は経営・管理ビザの基準を厳格化。現在は常勤職員1名雇用の義務づけや資本金3000万円以上、一定の日本語能力、業務分野に対する学歴、職歴の開示、専用事務所の開設などを求めるようになりました。

しかし、これとても、シンガポールなどと比べれば雲泥の差です。シンガポールでは永住権の獲得には1000万シンガポールドル(12億2000万円)以上をシンガポール企業に投資するか、2500万シンガポールドル(30億5000万円)以上を政府が指定する投資ファンドに投資する必要があります。

中国人富裕層にとっては相変わらず、日本への門戸はあけっぴろげの状態にあると言ってよいでしょう。

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