牛丼チェーンで活躍する「ご飯盛付けロボット」

鈴茂器工の売り上げを支えているのは、寿司ロボットだけではない。創業者の理念である米飯食文化拡大のために開発された基幹商品のひとつに、ご飯盛付けロボット「Fuwarica」がある。ボタンひとつで一定量のご飯をお茶碗に盛ることができる機械だ。

鈴茂器工が開発したご飯盛り付け機「Fuwarica」。現在、大手牛丼チェーンはすべて導入している
提供=鈴茂器工
鈴茂器工が開発したご飯盛付けロボット「Fuwarica」。現在、大手牛丼チェーンはすべて導入している

じつはご飯盛付けロボットを鈴茂器工が開発したのは2003年のことで、「ほぼすべての大手牛丼チェーン店に使ってもらっています」と谷口社長はいう。牛丼チェーンが使っているのは、衛生面もあるが、コスト的な利点が大きい。

牛丼のご飯は人の手で盛り付けられていたが、常に一定量に調整するには手間がかかる。とくに忙しい時間帯では、いちいち測っていられない。少なく盛るとクレームにつながりかねないので、ついつい多めに盛ってしまう。

1回や2回なら問題ないのだろうが、20グラム多く盛り付けると、1日で100食と計算しても2キロも余計なコメを使うことになる。年間にすると730キロとなり、店としては大きな損失である。ご飯盛付けロボットの導入で、そうしたムダを省けるのだ。

現在、「Fuwarica」は売り上げを伸ばし続けており、鈴茂器工の売り上げの約1割を占めるほどのヒット製品となったという。

「機械を売る会社」からの脱却

順風満帆の鈴茂器工なのだが、そこに危機感を訴えたのが谷口社長だった。2019年6月の役員人事で、創業家の鈴木美奈子氏(現在・会長)が社長に就任し、このとき谷口社長は取締役に昇進する。

そして5カ年中期経営計画に着手するのだが、そのために経営陣は熱海のホテルに2日間缶詰になって合宿をおこなっている。この席で谷口社長が語ったのが、証券会社時代に目の当たりにした、写真フィルム現像機で世界トップシェアを誇っていた会社のことだった。

鈴茂器工の本社で取材に応じる谷口社長
撮影=プレジデントオンライン編集部
鈴茂器工の本社で取材に応じる谷口社長

「ある日、この会社の事業がなくなってしまったんです。デジカメが登場し、またたく間に普及したからです」

デジカメの普及でフィルム需要は一気にしぼみ、そうなってくると現像機の必要性も薄れた。世界トップシェアだったために現像機を売る事業に傾注しすぎていたため、その会社の経営はたちまち窮地に立たされてしまった。

同じように、寿司ロボットという機械だけを売るビジネスだけに頼り切っていると、たちまち経営は傾くことになる。そうならないために、機械だけを売るのではなく、機械が売れるような環境づくりまで考えた経営方針が必要だ、と谷口社長は訴えたかったのだ。谷口社長の言わんとしていることを、経営陣は理解した。