「治さない医療」がある
しかし、男性は肺炎であっという間に亡くなった。力になれなかったと打ちひしがれる澤登さんに、葬儀の場で妻は言った。
「あなたが来てくれた数カ月、おじいさんは昔みたいに穏やかな人間に戻りました。最後に、いい時間をありがとうございました」
その時、澤登さんは「治さない医療」があることに気づいた。
「麻痺は治せなかったけど、最後の時間をよりよく過ごす、お手伝いはできたのだ」
これが、自分の役割なのだ。自宅に出向き、楽しい話をしながらマッサージをする。そうすることで痛みが改善し、寝たきりの人でも“その先”が見える。“絶望”の時間を耐え忍ぶだけではなく、最後まで自分らしく生きる日々が目の前に開かれていく。訪問マッサージには何と大きな可能性があるのだろう。
だからこそ、利用者からのもう一つの言葉が澤登さんに鋭く突き刺さった。
「あなたのマッサージで楽になったけど、もっと早く来てほしかった」
「私は良かったけど、父にもあなたのマッサージを受けさせたかった」
自分の努力が足りなかった。二度と、利用者にこんなことを言わせたくない。心の中で固く約束した。大事なのは、早く届けること。だから、全国展開なのだ。
上場を急いだ理由
澤登さんは福岡、沖縄、群馬、金沢、札幌と、かつての同僚や専門学校のつながりで、順調に事業所を立ち上げていった。しかし、13店舗目で「ご縁」もなくなり、はっきりと思った。これでは、「2025年問題」に間に合わない。「2025年問題」とは団塊の世代が後期高齢者になり、介護を受ける年齢になることだ。澤登さんはそれまでに、全国津々浦々に営業所を出すつもりでいた。
そこで2011年、「株式会社フレアス」として会社組織にしたが、それでも間に合わない。2019年に思い切って上場し、フランチャイズを始めたことで、47都道府県全てに「フレアス」が進出を果たすこととなった。こうして、「2025年問題」には間に合った。
上場までは100店舗以下だったのが、上場して6年で、全国441店舗に事業所が拡大したのだから、上場の意義は大きかった。

