天才軍師なのに「罠だ」と見抜けなかった

この記述の通りだとすると、官兵衛は完全な間抜けである。もう意見が相違して対立している政職に「実はこういうことなのだ」と説明されたのを真に受けて「そんなに上手く説得できるものかな」と自信がないくせに、ノコノコ入城し、捕まってしまったというわけだ。

いやいや、天才軍師なら、政職が「荒木を説得してくれたなら」といった時点で「これは罠だな」と察するところだろう。もし、本人が気づかなくても周りの家臣とかが止めるはず。なのに、ノコノコと出向くし、いきなり城内に自分から入っている。いくらなんでもノープランすぎる。

結局、得意な弁舌も計略も発揮することができずに、隠れていた大勢の筋肉モリモリの大男たちに取り押さえられるのは、シュール過ぎてほとんどマンガである。

しかも、これまた貝原益軒は、官兵衛がノープランな間抜けとは書かずに信長への忠義があったから云々と理由をつけて、こんな卑怯な罠を仕掛けた政職こそが悪人という流れに持ち込もうとしている。「○○社(大企業)と弊社サービスの活用検討を開始(=契約ではなく話しただけ)」とか無理矢理なプレスリリースを出してしまうスタートアップみたいだ。

後世に名を残したのは、貝原益軒のおかげ

それでも、官兵衛は幸運だった。監禁されたものの生き延びたし、出てきたら半兵衛が死んでいたので空いている軍師のポストにうまく収まることができた。

しかし、軍師とはいえ、その後は重く用いられたとは言い難い。その切れ者過ぎるところを秀吉に警戒されたという節もあるが、実のところ「頭脳は完璧なのに、任せたらミスる」ポンコツぶりを見抜かれていたのではなかろうか。

それでも官兵衛が「天才軍師」として後世に名を残したのは、ひとえに貝原益軒のおかげである。益軒は三国志演義のプロットを拝借し、失敗を高潔な倫理に変換し、間抜けな捕縛劇を忠義の物語に仕立て上げた。その筆力は本物だった。

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