ニラに直接巻かれている紫テープの正体
料理をしていて買ってきた野菜のテープを包丁で切る。いつの間にかそんな習慣がついていることに気づいた。手で引き剥がそうとしても、このテープは思ったよりも頑丈でうまく取れないからだ。
考えてみればけっこう大胆なことをやっている。野菜にテープを直接巻いているのである。それでいてテープの糊が気になったことが一度もない。一体この紫のテープはどういったものなんだろうか。
調べてみると、野菜を留めているテープは「たばねら」という商品で、生み出したのは「セロテープ」で有名なニチバンだと分かった。発売は1978年。コロナ禍と食品衛生法改正という二度の危機を乗り越え、今なお野菜結束テープ市場で圧倒的なシェアを誇るロングセラー商品だという。
この不思議なテープの謎を解明すべく、ニチバン本社を訪ねた。話を聞かせてくれたのは事業戦略本部の平山繁明氏。マーケティングから製品開発まで「たばねら」の全体を見ている人物である。
ニチバンは1918年創業、2026年3月期の売上高は504億7000万円。「セロテープ」をはじめとする粘着テープを主力とする老舗メーカーである。「たばねら」は、その幅広い製品群のなかではニッチ製品にすぎない。
貼るのではなく「束ねる」
「たばねら」が登場するまで、農家やスーパーでニラやほうれん草を束ねるのは、すべて手作業だった。紐や輪ゴムを使い、一本一本縛っていく。地味で時間のかかる工程である。
ここに「たばねら」が登場した。専用の結束機にセットしてレバーをガチャガチャと動かすと、テープが一瞬で野菜を巻き留める。手作業とは比較にならない速さで束ができ上がっていく。
「テープという形態で『物を結束する』という用途を、『たばねら』が初めて提案したんです」と平山氏は言う。テープといえば貼る・封をする・固定するもの。それを「束ねる」道具として位置づけ直したところに、この製品の発明性がある。生産現場で評価され、瞬く間に全国へと広がっていった。

