逆風が吹くほど強くなった

試作品を農家に持って行くと、率直な反応が返ってきた。「おいおい、前は良かったけど、新しいやつはうまくくっつかねえぞ」。現場の手にすぐ違和感は伝わる。微調整を重ね、ようやく合格点が出る。その繰り返しだった。

果てしないパズルを解き明かしたのは、長年にわたり積み重ねてきた粘着剤配合のノウハウである。一方で、同じ野菜結束テープを作っていた競合他社の中には、配合の組み直しに対応しきれず、事業からの撤退を選んだメーカーもあった。結果として、ニチバンの市場シェアはむしろ拡大した。

いま「たばねら」が野菜結束テープ市場で握るシェアは、約7割(ニチバン調べ)に達する。法改正という業界共通の逆風が、配合ノウハウを蓄えてきたニチバンにとっては、かえって地位を固める追い風に転じたのである。

こうして危機を乗り越えるたびに磨かれてきた技術の蓄積こそが、「たばねら」が40年以上にわたり支持を集め続ける背景にある。

「自着テープで野菜を束ねる」は日本独自

「たばねら」は技術力で日本市場をリードする。では、世界ではどうなのだろうか。

世界のスーパーマーケットに目を向けてみると、野菜の留め方は国によってまちまちだ。ヨーロッパではゴムバンド、アメリカではツイストタイ(捻って留めるもの)、韓国では個包装が多い。中国ではテープも見受けられたが、いずれにせよ「自着テープで束ねる」のは日本独特の光景である。

平山氏は「たばねら」は「基本的に日本の文化」に根ざしているという。

「海外のスーパーは、野菜をバーンと山積みにして、お客さんが自分で選んで買っていくスタイルが多いんです。日本のように丁寧に陳列するからこそ、こういうテープが必要になる」

イタリアのスーパーの野菜棚
写真=iStock.com/Francesco Marzovillo
イタリアのスーパーの野菜棚(※写真はイメージです)

日本では「1本40円だけれど、3本セットなら100円」とまとめてお得感を出す。野菜を手に取りやすい単位に揃え、見た目も整える。この丁寧さがそのまま付加価値になる文化が、「たばねら」を必要としている。

加えて、ゴムバンドやツイストタイには欠点もある。常に野菜に圧力がかかるため、茎が折れたり葉が傷んだりすることがある。「たばねら」は粘着剤が野菜に触れずテープ同士で固定するため、野菜を傷めない。美しく、効率的に、傷めずに陳列する。この三つの条件を同時に満たすのが、「たばねら」なのである。