あえて用途を細かく分けたことで生き残れた
もうひとつ、日本ならではの文化がある。「○○用」という細分化を好む傾向だ。
ニチバンには「たばねら」以外にも、用途を細かく分けた製品がある。お弁当用テープ、サラダカップ固定用テープ、値引き販売時に元のバーコードを覆うためのテープ「かくれんぼくん」、湿ったコンクリート面にも貼れる土木・建設用テープ「せこたん」など枚挙にいとまがない。両面テープ「ナイスタック」だけでも、屋外掲示用・透明プラスチック用など15種類のラインナップが揃う。
平山氏が語る他業界のエピソードが象徴的だ。「あるはさみメーカーが、海苔を刻む用のはさみを出していたんですが、まったく売れなかった。それを『シュレッダー用』と名前を変えたら、急に売れたそうなんです。日本のお客さんは『○○用』と書いてあるものを選びたがる傾向があるみたいです」
海外はその対極だ。アメリカで人気のダクトテープに代表されるように、「これ一本で何にでも使える」汎用性が好まれる。日本人は逆に、「これは○○用」と用途を限定された道具を信頼する傾向がある。
もともとアメリカで生まれたセロハンテープの技術が日本に持ち込まれ、日本の湿度に合わせて改良された。そして、丁寧な陳列文化と、用途別の道具を好む細やかな国民性に出会って、「たばねら」という独自の進化を遂げた。テープという西洋発の技術が、日本の文化の中で野菜を束ねるところまで来た――その距離の遠さこそが、この製品の面白さである。
「この紫色は、野菜の緑に映える補色として選ばれているんです」と平山氏は言う。
そうした細やかな心配りまで詰まった紫色のテープを、ぜひスーパーで気に留めてみてほしい。


