何度言っても、子どもの成績が上がらない。部下が育たない……。そんな悩みを解消。手出し、口出しをしなくても成果が上がる「戦略的ほったらかし教育」とは――。

「司令官」と「メイド」は実はまったく同じ

「この資料、こう作って、明日10時までに」――月曜の朝、部下のデスクで、そう告げたことはないでしょうか。あるいは別の日、納期が迫って焦っている部下を見かねて、「いいよ、ちょっと貸して。私がやっておくから」と引き取ったことは。

どちらも、上司として「よかれ」と思っての行動でしょう。前者は曖昧さを残さない明確な指示。後者は部下を窮地から救う親身な対応。しかし、はっきり言いましょう。それこそが、あなたの部下が育たない最大の原因です。

私は前者を「司令官スタイル」、後者を「メイドスタイル」と呼んでいます。一見、正反対に見えるこの2つの上司像が、実はまったく同じ罪を犯しています。部下が「自分で考え、選び、決める」機会を奪っているのです。

私は家庭教育コンサルタントとして10年以上、8000人を超える親の悩みに向き合ってきました。「親は司令官でもメイドでもない」というのは、私の著書の核心メッセージでもあります。ただし、このメソッドは家庭教育の枠を超えるものです。

我が家の3人の子は、それぞれ学費全額奨学金でアメリカの大学に留学、塾に通わず慶應義塾大学に進学、経団連が派遣するUWC(ユナイテッド・ワールド・カレッジ)の奨学生としてインドに高校留学と、自分で道を切り開いてきました。一方で私自身、自ら起業した会社の経営者でもあり、社員のマネジメントにも、まったく同じメソッドを適用しています。

子どもにガミガミ言う親と、部下にガミガミ言う上司。やっていることは、まったく同じ構造です。だから、解決策も同じなのです。

私が提唱する解決策、それが「戦略的ほったらかし」です。単なる放任ではありません。子どもや部下が自ら動き出す環境を戦略的に整え、信じて手を離す――いわば「愛のあるほったらかし」の技術です。

その威力を、私自身が中学時代に体感しました。所属していた陸上部は、「原田メソッド」の創始者として知られる原田隆史氏の実兄が顧問で、目標設定も練習計画も生徒と一緒に考える方針でした。指示されないのに、部員はみな放課後どころか朝も土日も練習に通いました。その結果、部員の半数以上が何らかのタイトルを獲得し、私自身も駅伝と800メートルで大阪市の1位になることができたのです。

みなさんも経験がおありかと思いますが、放っておかれるとやりたくなることでも、上から指示されると逆にやりたくなくなるものです。また日常で親が指示をすればするほど、子どもの指示待ち指向が強化され、主体性や積極性がなくなっていきます。

人は、自分で「やろう」と決めたことなら、高い集中力を発揮します。逆に、自分で決めたことでないのにがんばっているのは、「やらされている」状態。本当の力は出ない。企業においても成果主義の風潮が広がり、部下の仕事のやり方について事細かに口出しをする上司が増えているのではないでしょうか。子どもも部下もある程度放っておかれないと、自分で意思決定をしたり自分で選ぶ機会を持てません。これは職場でも家庭でも、まったく変わらない原理なのです。

(構成=久保田正志)