曲名に込められた「令和」への「旅」

「Journey to Harmony」は、脚本家・岡田恵和氏が作詞した。そこには「君」という表現が13回出てくる。この「君」を「君が代」と同じく「天皇」と捉えるのは、たやすい。なるほど、「天皇陛下御即位をお祝いする」以上、そう解釈しなければならないのかもしれない。だが、雅子さまが「君」をご自身のことだと受け止めたとも解読できる。

もし、そうだとしたら、雅子さまが涙を流されたのは、同じく歌詞に出てくる「僕ら」=嵐が、天皇陛下や自分のそばにいたり、ともにいたりする、その寄り添う姿勢に心を打たれたからなのだろうか。それとも、原武史氏の言うように、「国民的」アイドルグループの嵐が、天皇に捧げる「消費財」として歌ってくれた様子に感銘を受けたのだろうか。

曲名のHarmonyとは、元号「令和」の英訳として日本政府(外務省)が発表した「Beautiful Harmony」を意識したに違いない。その「令和」への「旅」(Journey)という曲を、嵐が歌う。曲の終盤、まさに雅子さまが落涙したところでは、6回にわたって「大丈夫」という表現が繰り返される。

その部分は「消費財」というよりも、セラピーというか、おまじないに近い。なだめて、気持ちを落ち着かせる。そんな願いが、ここに込められているのではないか。

「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」で手を振り応えられる両陛下=2019年11月9日、皇居
写真=ロイター/共同通信社
「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」で手を振り応えられる両陛下=2019年11月9日、皇居

6回繰り返された「大丈夫」の力

雅子さまの真意は、ご本人にしかわからないし、おそらくこの先も「正解」が示されることはない。たとえ嵐が「国民的」な存在だとしても、いや、そうであればなおさら、皇后陛下の御心境が、いかなる形であるにせよ、私たちに広く知らされる機会は、ない。

それでも、嵐が、持ち前の躍動感あふれるダンスを封印し、諭すように、語りかけるように、しっとりと歌ったこの曲に涙をこらえきれなくなったのは、この「大丈夫」の繰り返しにあるのではないか。雅子さまにとって「君」が天皇陛下であれ、ご自身の内なる声であれ、あるいは苦難を共にしてきた誰かであれ、「大丈夫」という言葉が普遍的な励ましとして届いたのではないか。

この「国民祭典」に至るまで、短いとは言えない期間にわたって、雅子さまはバッシングの的となってきた。皇居の内外から、心ないことばを向けられてきた。その彼女にとって、はるか年少の5人組アイドルが「大丈夫」と何度も語りかけてくれた時間は、それまでの苦難を癒やすのみならず、それからの「旅」(Journey)に向けた、何よりの励ましだったのではないか。