2026年度の春闘賃上げ率は昨年に続き5%程度の高水準が見込まれており、日銀が目指すところの賃金と物価の好循環が実現しつつある。日本もようやくインフレ経済に戻りつつあるといえる。
もちろん、足元の物価上昇には輸入インフレの側面もあり、家計にとって痛みを伴う部分はある。しかし、一定のインフレそのものは、企業にとって必ずしも悪いことではない。名目GDPが拡大すれば売上は増えやすくなり、価格転嫁が進めば利益率の改善も可能になる。デフレ下では難しかった値上げが進み、売上高以上に経常利益が伸びる局面も生まれやすくなる。
利益が増えれば、企業は投資余力を持つ。しかも日本では人手不足が深刻化しており、省力化投資やDX投資への需要は強い。企業の投資増加が成長期待を高め、その期待がさらに投資を呼び込む。こうした循環が回り始めれば、日本株の評価水準が切り上がるのは自然な流れである。海外投資家はこうした日本経済の構造変化に注目しているのである。
「変わり始めた日本」への期待が原動力
以上のように、海外投資家が日本株を買っている理由は、単なる出遅れ修正や最近のAI相場への便乗だけではない。政策は成長志向へと傾き、企業は資本効率を意識し、日本経済はデフレから脱却し正常化に向かっている。こうした三つの変化が同時に進んでいることを海外投資家は評価しているのである。
言い換えれば、彼らが買っているのは日本株そのものというより、「変わり始めた日本」への期待である。過去の日本には、割安であっても買われない理由があった。だが今は、変化の方向性が見え始めている。その意味で、現在の日本株高は単なる相場の熱狂ではなく、日本経済の評価の見直しと捉えるべきだろう。
相場上昇のスピードが速く、バリュエーション面での割高感も見え始めているため、短期的には調整もありうる。しかし中長期でみれば、海外投資家の日本株買いの背景は、一時的なテーマではなく、息の長い構造変化に支えられている可能性が高い。日本株の上昇相場は終盤ではない。むしろ、長い低迷期を経て、ようやく長期的な上昇トレンドに入ったと考えるべきなのかもしれない。


