海外投資家から見れば、日本政府が単なる景気対策ではなく、分かりやすく「どこに成長の資本を配るのか」を示したことの意味は大きい。経済安全保障、先端技術、サプライチェーン再構築、エネルギー転換といったテーマが国家戦略として位置付けられ、それが企業の投資行動と株式市場の期待を結びつけている。海外投資家は、こうした政策の方向性を評価しているのである。

理由2:コーポレートガバナンス改革に対する「本気」度

第二の理由は、日本企業によるコーポレートガバナンス改革の進展である。これはここ数年、海外投資家が一貫して高く評価してきた論点だが、最近はその定着に加え、変化も見え始めている。

東京証券取引所は、PBR1倍割れ企業を念頭に資本効率改善を強く促してきた。企業側もROEや資本コストを意識した経営を求められ、株主との対話を重視する姿勢が広がっている。その結果、自社株買いや増配といった株主還元策が拡大し、日本企業の資本配分は確実に変わりつつある。

通勤する人々
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見ているのは「目先の株価対策」ではない

2010年代半ば以降、自社株買いを中心に事業法人の買い越し額が増加基調にあり、需給面から株式市場の下支え要因になるとともに、海外投資家の評価にもつながっている。ただし、海外投資家が重視しているのは、単に株主還元策が増えたことだけではない。

「日本企業は余った現金をため込む」といった非効率な経営をしているという長年のイメージが修正されつつあることだ。日本企業が変わり始めたという認識は、海外投資家の日本株評価を大きく押し上げている。

さらに重要なのは、改革の議論が次の段階に入りつつある点である。国内では、余剰資金を単に自社株買いや配当に回すだけではなく、設備投資、人的資本投資、知的財産投資といった中期的な成長投資に振り向けるべきだという考え方が強まっている。

金融庁でも、コーポレートガバナンス・コードの見直しを通じて、余剰資金の有効活用を促す方向が検討されている。この流れは、日本の株式市場にとっても好材料である。自社株買いがやや減る局面があったとしても、それが将来の収益力を高める投資につながるなら、企業価値の向上という観点ではより望ましい。

海外投資家が見ているのは、目先の株価対策ではなく、資本配分の質そのものなのである。

【図表4】事業法人の売買状況の推移
出所=日本取引所グループ
注=二市場合計(東証、名証)

インフレ経済への好感

理由3:日本経済のデフレ脱却と「正常化」

第三の理由は、日本経済そのものの構造変化である。より端的に言えば、日本がようやくデフレ経済からインフレ経済へ移行しつつある、という点である。

1990年代後半以降、日本は長くデフレに苦しんできた。価格が上がらない、賃金も上がらない、企業は値上げをためらう、名目成長率も伸びない。そうした環境の下では、企業が売上を伸ばし、利益を積み上げ、投資を拡大する循環は生まれにくかった。