現在のAI相場に対する警戒感は根強い。ただし、かつてのITバブルとの大きな違いは、企業収益の裏付けがあることだ。ITバブルのころは赤字企業も多く、バリュエーションは極端な割高水準にあり、期待先行は否めなかった。今回はAI分野への投資を中心に企業業績の裏付けを伴う上昇である。市場心理だけでなく、利益見通しの改善が株高を支えている点は重要だ。

さらに言えば、中期的なAI需要の拡大はなお疑いにくい。現時点では、AIの収益源はデータセンターなどの投資需要が中心である。しかし、今後はAIエージェントの普及が進み、企業の業務そのものにAIが深く組み込まれていく可能性が高い。

また、その先にあるのが、いわゆるフィジカルAIである。

AIがロボットや産業機械と結びつけば、省人化、無人化、自動化の需要は一段と広がる。日本企業はロボットやセンサーなど、AIの物理的な実装に必要な分野で強みを持つ企業が多い。AI需要の拡大は、米国の巨大テック企業だけの物語ではなく、日本企業にも長い追い風となりうる。

【図表2】日経平均と日経平均(除くAI関連)の推移
出所=Bloomberg
注=日経平均(除くAI)は、日経平均からアドバンテスト、東京エレクトロン、レーザーテック、フジクラ、ソフトバンクグループを除いて算出。

なぜ海外投資家は日本株を買い漁るのか

もっとも、AI・半導体株の強さだけで日本株全体の上昇を説明することはできない。実際に相場を大きく押し上げた主役は海外投資家である。4月以降、海外投資家は7週連続で日本株を買い越している。4月の買い越し額は5兆6965億円と月間買い越し額で過去最高を更新した。さらに連休明けのわずか2営業日でも1兆2351億円の買い越しとなり、急騰相場を演出した。

なぜ海外投資家はこれほど積極的に日本株を買っているのか。もちろん、イラン情勢の改善期待やグローバルなAI・半導体関連株上昇の流れの一環で日本株にも資金を入れているという面はあるが、そもそも、日本株に対するポジティブな評価をしている海外投資家が増えている可能性が高い。以下では、その理由を三つに整理したい。

【図表3】日本株投資部門別売買状況と日経平均の推移
出所=日本取引所グループ
注=二市場合計(東証、名証)
理由1:高市政権の成長戦略への期待

第一の理由は、政策への期待である。昨年の高市政権の発足後、市場では財政拡張的で成長重視の政策運営が続くとの見方が広がった。いわゆる「高市トレード」と呼ばれる動きで、日本株買いと円売りを組み合わせる投資行動が強まった。政権発足後のブームは一巡したが、海外投資家の見方は変わっていない。当時買い遅れていた投資家がこの局面で日本株投資を積極化させている面はあろう。

非効率からの卒業、「変わり始めた日本企業」像の広がり

特に注目されているのは、AI、半導体、防衛、造船、核融合など17の戦略分野への重点投資を柱とする成長戦略だ。こうした政策は、関連産業にとって直接の追い風となるだけでなく、日本経済全体の潜在成長率を押し上げる期待につながる。

タブレット端末でも株価をチェックしている手元
写真=iStock.com/primeimages
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