秘書は、お礼状やご案内、挨拶状、祝電、弔電……と、ビジネス文書以外の書簡を多く扱います。ひな形を用意して作業の効率化をはかることも大切ですが、それだけでは無味乾燥で、「形ばかりの文章」になってしまいます。プロの秘書は「その人ならでは」のひと言をプラスして、心が伝わる書簡を送ります。

「その人ならでは」といっても、何も難しく考える必要はありません。たとえばお礼状を書くなら、上司と少し話をしてエピソードを引き出すのです。「週末はよく晴れましたね。ゴルフのほうはいかがでした?」と話しかければ、「特に○○さんのスコアが良くてね……」などという話が聞けるでしょうし、「○○さんはグルメでいらっしゃるから、おいしいお店をご紹介いただけたんじゃないですか?」と聞けば、「あんな穴場があるなんて知らなかったよ」と、機嫌よく会食の話をしてくれるのではないでしょうか。

お礼状には、そうして得た「生きた情報」を、ひと言コメントとして盛り込みます。たとえば、「先日はご一緒いただきありがとうございました。○○さんはさすがの好スコアで……」「ご招待いただき、本当にありがとうございました。会社の近くの場所に、あんなにすてきなビストロがあるとは知りませんでした……」という具合です。光景が目に浮かぶようなひと言を添えるだけで、こちらの楽しさや感謝の気持ちが相手に伝わるのです。これは、社内での簡単な伝言メモや、資料送付の際に添える一筆箋などにも言えること。ぜひ実践してみてください。

各種礼状は、できれば手書きがよいでしょう。パソコンで作成した文章より情感が伝わりやすく、「自分のために書かれたものだ」という特別感が伝わりやすいからです。どうしても時間がなく、パソコンで作成する場合も、宛名だけは手書きにしたほうがいいでしょう。