お客様や上司と話をするとき、プロの秘書は決して正面には座りません。意外かもしれませんが、斜め前か横に座ります。

心理学的に、座る位置には大きな意味があるとされています。相手との心の距離が、それによって決まってしまうからです。したがって、商談などの場合は、座る位置によって話の展開が変わる可能性すらあります。

お客様と話をするときによくあるのが、正面に座るケース。一見、顔と顔を突き合わせて話すことができる、良いポジショニングのような気がするかもしれません。しかし、向き合うということは、お互いの体や視線が対峙するということ。言い換えれば、逃げ場のない状態だともいえます。大切な商談だと意気込んでいると、「絶対に成功するぞ」という気持ちから余計に視線は鋭くなり、相手にとって居心地の悪い空間になってしまうこともあるでしょう。また、こちらが戦闘モードだと、相手も応戦してくる可能性があります。正面というのは、いらぬ意見の対立を引き起こさないためにも、実は避けたい位置関係なのです。

その点、斜め前に座れば、視線を合わせて話すこともできるうえ、正面に座った場合のように、逃げ場のない状態にもなりません。相手を必要以上に意識することなく、自然に会話ができるのです。コの字型のソファであれば、直角の位置に座るといいでしょう。もし机を挟んで話をするなら、お客様の正面には上司に座ってもらい、自分はその横に座ります。最初に大枠を説明するのは上司でも、細かい説得に当たるのは部下なので、商談の本当の主役同士は自然と斜め前の位置関係になるというわけです。