長い間一緒に仕事をしていると、上司と秘書との間柄も、少しずつフランクなものになっていくことが多いようです。仕事中と雑談中のメリハリがついていれば、まったく問題ありませんが、上司からの気軽なお誘いだとしても慎重になるべきです。

上司にまったく下心がなく、「食事に行こう」と誘われた場合。私なら、「ありがとうございます。それでは、部署の皆と予定を取りまとめておきますね」とお答えします。暗に、「皆と」、と匂わせるのです。勘のいい上司であれば「まぎらわしい誘い方だったかな」と気づき、「それじゃあ、よろしくね」と、サラリと返してくれるでしょう。そして、それ以降は常に「皆で」というお誘いとなるはずです。

秘書の中には上司からの「下心のあるお誘い」や、突然のプレゼントに頭を悩ませている人もいるようです。そんな場合の対応も、基本的には同じ。どのような誘いでも、「えっ、2人きりでですか?」などと過剰な反応はしません。「2人きりの食事のお誘いだとはまったく考えてもみないこと」という態度で、「同じ部署の者にも伝えて、予定を立てますね」とお答えします。この場合もやはり、勘のいい上司なら「断られたな」と察して、大人の対応をしてくれるでしょう。

しかし、その後もたびたび誘われるようであれば、「私にその気はないですよ」ということをもう少しストレートに伝えるのもひとつの方法です。プライベートな雑談をしているときに、「お付き合いしている人がいるんですけど……」と、エピソードのひとつとして情報提供しましょう。こうした発言をすれば、さすがにどんな男性でも、“牽制球”だということに気づくはずです。

プレゼントをされてしまった場合は、すぐに所属部署の上司に報告します。それも「困っている」というのではなく、「こんなに高価なものをいただいてしまったんですけど、どうお返しすればいいでしょうか」と、素直に相談するのです。そして後日、「実は上司の○○にも相談して選んだのですが、気に入っていただけるでしょうか……」と、あくまで気づかないふりでお返しを渡してしまいます。すると、上司も自分の迂闊な行動が公になっていることに気づき、態度を改めてくれるでしょう。

もし、上司の好みで秘書に任命されたのであれば、いずれは別の部署に異動となることもあるでしょう。たとえ、上司とはうまくいかなくとも、周りの人と公平に、明るく接し続けているならば、見ている人はちゃんと見ているものなので、秘書の適性があるならば、別の上司の秘書として仕えることもあるでしょう。

上司からのお誘いの多くは、ねぎらいの気持ちからと考え、甘えすぎず、客観的に見てもフェアであるよう、上司のイメージを守る必要があります。

日本一のプロ秘書が教える「一流のおシゴト」
「それでは、部署の皆の予定を取りまとめておきますね」

カレーハウスCoCo壱番屋(株式会社壱番屋)創業者(宗次夫妻)秘書
中村由美

コンサルタント会社の社長秘書を経た後、当時まだ100店舗の中堅企業だった株式会社壱番屋に入社。秘書の経験を買われ、社長秘書に任命される。急成長の壱番屋において創業者・宗次徳二氏をはじめ、3代の社長に仕え、トップの側で上場も経験する。中小企業の秘書実務と上場企業の秘書実務の両方を知る数少ない人物。日本秘書協会(元)理事、ベスト・セクレタリー、日本秘書クラブ東海支部(元)役員、秘書技能指導者認定、サービス接遇指導者認定。
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