※本稿は、横山佳枝『ブラック就業規則』(東洋館出版社)の一部を再編集したものです。
「退職後も機密を漏えいしない」就業規則に引っかかるのか
転職することとなり、転職先で、以前の勤務先で私が作成した企画書などの資料を使いたいと思っています。以前の勤務先の就業規則に、「在職中及び退職後においても、業務上知り得た会社、取引先等の機密を漏えいしない」、「この違反により会社が損害をこうむった場合には損害を賠償する」と定められていますが、これに違反するのでしょうか。その他法的に問題はありますか。
企画書など業務上作成した資料には、会社独自のノウハウや営業秘密にあたる情報が含まれている可能性があります。秘密として社内で管理され、事業上も重要な情報であれば、漏えい禁止の対象である「機密」に該当するとして、就業規則及び不正競争防止法に違反するおそれがあります。
また、就業規則で別途定めがない限り、当該資料の著作権は、以前の勤務先に帰属しますので、著作権侵害に該当するおそれもあります。
厚労省モデル就業規則が定める「機密保持義務」の範囲
多くの就業規則では、従業員の禁止行為を定めています。禁止行為の中に、会社や取引先の機密を漏えいしないことも定められ、在職中だけでなく、退職後にも及ぶとされていることが一般的です。
厚生労働省のモデル就業規則では、遵守事項として、①許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を使用しないこと、②職務に関連して自己の利益を図り、または他より不当に金品を借用し、若しくは贈与を受ける等不正な行為を行わないこと、③勤務中は職務に専念し、正当な理由なく勤務場所を離れないこと、④会社の名誉や信用を損なう行為をしないこと、⑤在職中及び退職後においても、業務上知り得た会社、取引先等の機密を漏えいしないこと、⑥酒気を帯びて就業しないこと、⑦その他労働者として相応しくない行為をしないこと、が挙げられています。
「営業秘密」と認められる3つの要件
前職で作成した企画書等の資料については、製品の販売量や粗利、取引先などの営業秘密にあたる情報が含まれている可能性があり、就業規則が漏えいを禁止する「機密」に該当するかどうかが問題となります。この点、裁判例では、退職後の行動を過度に制約することのないよう、不正競争防止法における「営業秘密」の要件をふまえ、機密漏えい禁止を定める就業規則や合意の適用範囲を限定しています。

