課長に昇進したら残業代は出なくなるのか。「管理職だから仕方ない」と諦めるしかないのか。弁護士の横山佳枝さんは「労働基準法上の『管理監督者』に該当しなければ、役職が課長でも部長でも残業代を請求できる。名ばかり管理職かどうかは役職名ではなく、労働の実態によって判断される3つの基準がある」という――。

※本稿は、横山佳枝『ブラック就業規則』(東洋館出版社)の一部を再編集したものです。

夜遅くにオフィスで仕事をしている女性
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「課長になったら残業代はゼロ」は本当か

勤務先の就業規則では、課長職以上は「管理監督者」とされ、残業代は支給されないと定められています。しかし、課長とはいっても、部署によっては、部下もおらず、業務内容や権限も以前と変わらず、何をするにも上司の決裁を仰ぐ必要がある場合もあります。そのような場合であっても、残業代が支払われないことに問題はないのでしょうか。

横山佳枝『ブラック就業規則』(東洋館出版社)
横山佳枝『ブラック就業規則』(東洋館出版社)

労働基準法上、“監督若しくは管理の地位にある者”(いわゆる“管理監督者”)には、労働時間、休憩、休日に関する規定が適用されないことから、会社は残業代(時間外労働や休日労働に関する割増賃金)を支払う義務を負いません。この管理監督者は、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者を指し、役職名ではなく、労働の実態とそれに相応しい待遇を受けているかどうかにより判断されます。

裁判例では、出退勤の自由がなく、部下の人事考課に関与しない銀行の支店長代理が管理監督者にあたらないと判断されるなど、管理監督者の範囲は限定的に解されています。

そのため、課長職の就任前後で業務内容や権限に変化がないのであれば、管理監督者にあたらないと考えられ、会社に残業代を請求できる可能性が高いといえます。

労働基準法が定める割増賃金の支払義務

労働基準法第37条では、以下の通り、時間外労働、休日労働、深夜労働における割増賃金の支払義務を定めています。同条に違反した場合には、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される場合があります。

時間外労働 1日8時間、1週40時間を超えた場合には25%以上の割増賃金の支払義務(なお、1カ月60時間を超えた場合には50%)
休日労働 毎週少なくとも1日の休日(法定休日)を与えなければならず、休日労働をさせた場合には35%以上の割増賃金支払義務
深夜労働 午後10時から午前5時までの間に労働させた場合には25%以上の割増賃金支払義務

例外的に、労働基準法第41条2号により、“監督若しくは管理の地位にある者”(いわゆる“管理監督者”)には、時間外労働、休日労働に関する割増賃金の定めが適用されません(ただし、深夜労働の割増賃金は発生します)。