営業秘密の3要件は以下の通りです。

① 秘密管理性:秘密として管理されていること(例:データへのアクセス制限、㊙表示など)
② 有用性:生産方法、販売方法その他事業活動に有用な技術上または営業上の情報であること
③ 非公知性:公然と知られていないこと

そのため、前職で作成した企画書等の資料に含まれる情報が、①社内で秘密として管理されている、②事業活動上有用なものである、③公然と知られていないものであるという要件を満たさない場合には、「機密」に該当しないと解されます。

上記の3つの要件を満たした場合には、就業規則に違反するとともに、「不正の利益を得る目的」または「営業秘密保有者に損害を加える目的」があれば、不正競争防止法第2条7号に違反します。

ラップトップから突き出した手が、カギをビジネスマンに渡しているコラージュ
写真=iStock.com/Anton Vierietin
※写真はイメージです

「社外持出し禁」表示がなかった資料は争える

横山佳枝『ブラック就業規則』(東洋館出版社)
横山佳枝『ブラック就業規則』(東洋館出版社)

エイシン・フーズ事件(東京地裁平成29年10月25日)は、食品の商品企画・開発及び販売等を業とする会社(Y)が、元従業員(X1)及びX1の転職先の食品の製造・輸入・販売等を業とする会社(X2)に対し、X1が転職後にYの取引先等の機密情報を開示、使用したとして、損害賠償請求をした事案です。なお、X1は、Yとの間で、退職後、業務上知り得た機密事項を漏えいしない旨の合意書を締結していました。

裁判所は、X1とYとの合意書で漏えいを禁止する「業務上知り得た機密事項」とは、公然と知られていないこと、Yの業務遂行上有用性を有すること、Yにおいて秘密と明確に認識しうる形で管理されていることを要すると限定的に解釈しました。

そして、Yでは、X1がX2に開示した資料を「社外持出し禁」などと表示しておらず、秘密として管理されていないとして、X1が開示した資料に記載された情報は、機密情報に該当しないと判断しました。

見落とされがちな「職務著作」という地雷

従業員が会社の指揮監督を受けながら業務上作成した資料は、就業規則や雇用契約で別途定めがない限り、「職務著作」として、会社に著作権が帰属します。そのため、前の勤務先で自ら作成した資料であっても、転職先でそれを複製するなどして利用する場合には、前勤務先の著作権を侵害することとなります。

著作権法第15条では、「法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする」と定められています。

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