削ぎ落として価値を高めた
無印良品は、パッケージのロゴや模様や製品のデザインや機能に関して、それまで「何かを加えることによって価値を高める」ことしかやってこなかった世界において、「何かを削ぎ落とすことによって価値を高める」ということをやった、おそらく最初期の事例の一つだと言えるでしょう。
無印良品は、それまで主流となっていた社会におけるビジネスのやり方に対して、クリティカル(批判的)なアンチテーゼを唱えることで、「ミニマルでシンプルであることの豊かさ」という新しい価値観を人々に示した、という点で、クリティカル・ビジネスの一つの典型と考えることができます。
一方で、社会的コンテキストを読み誤ることは、大きなブランド破壊にもつながりかねません。
2018年、イギリスの高級服飾ブランド、バーバリーが年次レポートを発表すると、すぐさま批判が巻き起こり、最終的に全世界的な不買運動にまで発展しました。いったい何が起きたのでしょう。
バーバリーが、当シーズンにおける売れ残りの服やアクセサリーなど3700万ドル(約42億円)相当を、新品のままに焼却処分したと発表したのに対して、環境意識の高いセレブリティや消費者がこれを激しく非難したのです。結果として、同社のブランド価値は著しく毀損されてしまいました。
時代が移れば社会の倫理規範も移る
おそらく、同社の経営者たちは大いに戸惑ったことと思います。というのも、売れ残った在庫を一括して焼却処分することは、アファーマティブ・ビジネス(顧客を含むステークホルダーの価値観や欲望を全肯定するビジネスのこと)のパラダイムにおいてはこれまでもずっと習慣として行われており、不本意ではあるものの、社会的にも容認されていたからです。
しかし、時代が移れば社会の倫理規範も移ります。それまで許されていたことが、ある日を境に許されなくなる。だからこそ、過去の延長線上に物事の是非を考えるアファーマティブ・ビジネスのパラダイムでは、大きく判断を誤る可能性があるのです。
この事例は、現在の私たちが「ビジネスの持つ原罪性に厳しい眼差しが注がれる時代」を生きていることを示しています。バーバリーがあれほどまでに厳しいバッシングを受けたのも、その背後に「アパレルは製造段階で巨大な汚染を発生させる」という事実があったからです。しかしこれは、何もアパレルに限ったことではありません。
あらゆるビジネスには「自然資源を利用する」「環境に負荷をかける」「ゴミを排出する」「組織の中に格差を作る」など、何らかヒューマニティの毀損につながる要素、つまり原罪性を有しています。そして今、この原罪性に対して厳しい眼差しが注がれるようになっているのです。


