かつての農水省は国民のために戦っていた
私が“懐かしい”と言ったのは、かつては農林部会で自民党議員と農林水産省が激しく対立したからである。特に、議論が紛糾したのは、米価や乳価などの行政価格の決定をめぐってである。
農林水産省は、消費者により安く食料を供給したり、関税削減などの国際交渉に対応したりするためには、農業の構造改革を進め、コストの低い効率のよい農業にしなければならないと考えた。農家の規模が拡大してコストが下がれば、それを価格引き下げにつなげたいと主張したのだ。
しかし、選挙区の農家から経営を向上するためには価格を下げないでほしいという強い要望を受けている国会議員は、農林水産省の言うことを聞くわけにはいかない。選挙で落ちるからだ。また、農地面積が一定で一戸当たりの規模を拡大するためには、零細な農家に農業をやめて農地を貸し出させなければならない。そうすると農業票が少なくなってしまう。
自民党農林族の恫喝
部会が開かれる前に役人が国会議員に根回しをするのだが、選挙で落ちればただの人になると考える国会議員が承服するはずがない。
「そんな政策をすると、俺たちは選挙に落ちる。それでも良いのか」と予算獲得などでは族議員の政治力を利用したい農林水産省を脅す。
部会は紛糾し怒号が飛び交い、いつも時間無制限のバトルとなった。日をまたぐどころか週をまたぐことさえあった。国会議員の方が地位は高いので、農林部会の場でかれらは役人を激しく罵倒する。他の部会に所属する自民党議員が農林部会に出席した際、その激しいやり取りを見て、「今日、農林部会で役人を罵倒するやり方を教えてもらいました。ありがとうございました」と発言して退席したことを、私は忘れない。それでも農林水産省の役人は引き下がれないので、ひたすら理屈を言って耐えるだけだった。

